ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

日常生活活動が極度に制限されている人

引き続きおいらの命綱である社会福祉制度の話をしよう。障害者手帳や障害基礎年金には複数の等級があり、それは障害の程度によって決まる。例えば、障害者手帳の場合は、心機能障害には1、3、4級があり、1級が一番障害の程度が重い。それぞれは、自己身辺、家庭、社会とその活動レベルの違いはあれど、いずれもその活動レベルにおいて日常生活活動が極度に制限されるものという基準になっている。

 日常生活活動が極度に制限されるという基準は、あくまで健常者と比べての話だ。正直おいら自身はそんな極度というほど制限された生活を送っていないと思ってしまう。おいらは、生まれて以来障害を持った体で生きてきた。だから、日常的に息切れしたり、階段を登れなかったりすることも、それが普通と感じている。長年障害のある体に合わせた生活スタイルで過ごしているため、それが制限を受けているものなのかよくわからない。おいらにとっては、この体とこの生活が普通であり、それは極度に制限を受けている生き方とは感じないのだ。

 でも時々、もし健常な体だったら、どんな感じだろうかどれほど楽なのだろうかと思うこともある。もしそれを体験することができれば、おいらの今の生活が実際に極度に制限されていることを実感できるかもしれない。以前にもお話ししたが、おいらにも健常者とほぼ変わらない黄金時代があった。飲食の制限はなく、酒を飲もうが、脂っこいものを食べようが、大食いしようが平気だった。徹夜したり、登山したり、満員電車に長時間乗ったりもできた。研究のために、朝から晩まで生物の野外調査に出かけたりもした。現在はその全てができない。だからその頃と比べれば、確かに今は極度に制限された生活を送っていると言える。

 しかしやはり、今の生き方を極度に制限されていると捉えるのには、少し違和感がある。極度に制限されていると言われると、ネガティヴな印象を受けてしまう。なんだかとても虐げられた窮屈な生活を送っているようだ。毎日辛くて苦しくて耐え忍んでいるような気がしてくる。入院すれば確かにそんな日々になる。でも本当にそんな辛い気分で生活していたら、そう長く耐えられるものではない。いつか自暴自棄になったり、狂ったり、死にたくなってしまうだろう。でも、おいらの日常生活は虐げられてもいないし、辛くて苦しいわけでもない。制限はあるかもしれないが、その中でも喜びや楽しみを日々見出している。むしろ制限がある方が、ちょっとしたことに大きな幸せを感じたりもするのだ。健常者の視点から見れば、障害者は制限がある生き方にみえるだろう。では逆に、障害者の視点から見ると健常者はどんな生き方に見えるだろうか。制限のない生き方に見えるだろうか。

4本の命綱

おいらが障害者生活を送る上で、命綱とも言える4つの公的社会福祉制度がある。障害者手帳、障害基礎年金、指定難病医療費助成制度、そして住んでいる市町村による重度障害者医療費助成制度の4つである。幸いなことに、おいらは現在この全ての制度を利用できており、その結果、一時的な自己負担医療費は少なく、かかった医療費も後日全て返金され、さらに年金を受け取り、そして税の軽減、公共料金や公共交通機関の割引などの惜しみない恩恵に授かっている。それらのうち指定難病以外の3つがこの6、7月に更新時期をむかえている。

 新規にしても更新にしても、これらの制度を受けるには大体医師の診断書などを元にした審査が必要になる。それぞれは独立した機関によって審査されるため、一方が通っても一方が通らないことはある。例えば、指定難病に認定されれば、障害者手帳は必ずもらえそうな気がしそうだが、もちろんそんなことはない。難病であっても生活上に著しい制限がなければ障害者手帳をもらえないのだ。障害基礎年金は、障害者手帳の有無や指定難病であるかなどは問わないが、障害者手帳をさらに厳しくした基準で日常生活の制約度や安静状態を審査される。一方、市町村による重度障害者医療費助成制度は診断書は必要でないが、障害者手帳の等級で決定される。

 これらの制度を審査の厳しさから見ると、障害基礎年金>重度障害者医療費助成>障害者手帳>指定難病となるだろう。さてこれらの上位3つの更新時期が迫ったおいらは、継続できるかがかなり不安である。これらの制度を新規で申請した2年ほど前は、現実に酷い障害状態だった。とても働ける状態ではなく、入院していたか退院後もベッド上の生活が続いていた。それから奇跡的に回復し、昨年度から幸いに新しい職を得て仕事を始めることができるようになった。だから、客観的に見れば障害の程度は少なからず軽減していると診断されるだろう。

 ペースメーカーが入っていることもあり、障害者手帳は継続できるだろうが、等級が下がる可能性はある。そうなれば重度障害者医療費助成は受けられなくなる。さらに、審査がより厳しい障害基礎年金なんてとてもじゃないけど無理である。もう、回復して働けるようになったのだから、支援を受ける必要はないし権利もないと言われればその通りかもしれない。でもおいらにとっては、どれも切実な命綱だ。4つの命綱でしっかり支えられていることで、長く体調を維持し安心して働き続けることができている。綱が切れれば、経済的負担が増えるだけでなく、それを補おうと生活や仕事の面でどうしても無理をしなくてはならなくなり、結果無理がたたって体調が悪化する。そんなことを考えていたら、早くも夜中に胸が苦しくなり目が覚めてしまうのであった。

フォンタンマスターへの道:水編

 先天性心疾患者にとって、体内の水分量コントロールは極めて重要な課題だ。多過ぎれば、体が浮腫むだけでなく血液量が増えて心臓に大きな負担がかかる。しかし、少なければ脱水や血栓のリスクが高まる。この点は、フォンタン患者には、特に難題である。フォンタン患者はただでさえ静脈圧が高くなりやすいため、水分が減って血がドロドロになるとますます静脈圧が上がってしまう。静脈圧が上がれば、腎臓、肝臓、消化管など様々な臓器が鬱血してやがて機能不全を起こしてしまう。だから、しっかりと水分は取る必要がある。でももちろん多ければそれだけ心臓の負担が大きい。それはまた心不全の原因になり、静脈圧の上昇と多臓器不全を導く。どっちにしても大きなリスクがあり、絶妙な水分コントロールが要求される。

 そのため、多種の利尿剤を併用服用しているフォンタン患者が多いだろう。おいらもまた、3種の利尿剤を毎日服用している。どの薬をどの程度使うかの見極めはまたとてつもなく難しい。患者の病状、年齢、性別、体重などによって異なり、一般的な正解がないからだ。同じ患者でも、経過年数によって薬の効き方が変化する。だから、日々定期的な診察によって、投薬量を調節していく必要がある。

 水分コントロールは、患者自身の自己管理が不可欠である。医者任せにしてはいけない。入院している時ならば、摂取した水分量と尿から出た量を定量的に計測する場合が多いので、医者任せにできる。しかし、自宅では自分で摂取量と尿量を把握する必要がある。とはいえ、厳密に計量する必要はない。あくまで感覚的に、摂取した量が多いか、出た量が多いかを感じ取っていく。そして体の変化を敏感に感じ取ることだ。水分が多ければ、体のどこかにむくみが出る。朝起きた時は顔がむくみ、夕方には脚がむくむ。だから、毎日朝晩の顔や足のむくみは確認すべきだ。体重の変化も毎日見ておく。急激な増減は避け、なるべく一定の体重を維持する。そして、自分の体調が一番良いと感じる時の体重を見極めるのだ。おいらの場合は、50〜51kgの間が現在はベストな体重である。

 薬の量に関しても、積極的に自己管理すべきである。日常の体調や尿量などから判断して、利尿剤の量を減らしたり増やしてもらうよう主治医に提案して構わない。もっと言えば、処方された量も律儀に守って服用せず、水分が抜けすぎると思えば、こっそり減らしたっていい。ただし、処方された量以上に飲むのは控えた方が良い。こうして利尿剤の量を医者と相談できるようになれば、やがてある種の利尿剤を頓服薬的に処方してもらえるようになるだろう。つまり、自己判断で利尿剤を飲んだり飲まなかったり決められるようになるのだ。

 優れた武闘家は、心技体のバランスを保つことができる。フォンタンマスターは、心(心臓)・水(水分)・体(体調)のバランスを保つことができる。おいらはそれを会得するのに、5年近い歳月がかかった。フォンタンマスターの道は険しいのだ。

健常者の時間、先天性心疾患者の時間

このブログでも度々書いてきたが、おいらは子供の頃から自分の寿命は50歳までだろうと感じている。5年前にフォンタン術後症候群になり、PLEや不整脈の合併症が出てからは、その寿命をさらに確信した。先日の心筋梗塞の時には、50歳も甘い予想だったなとさえ思った。そして、今現在も寿命は50歳かそれ以下だという予想は変わっていない。

 しかし、周囲の人々に自分の寿命が50歳までだろうと話すと、全ての人が励まそうと「そんなことはないよ」と否定してくる。より親しい人なら「こういう人に限って長生きしそうだ」とつっこんだりもする。あるいは、「自分はもっと早く死にそうだ」と自嘲される方もいる。当然こうした言葉は、本心ではない。それに客観的に考えれば、おいらが健康な人より長生きすることなどまずありえない。だから、常日頃こうした本心ではない嘘っぱちの慰めには、不満なのである。

 というのは全くの冗談で、周囲の人の暖かい配慮にとても感謝している。むしろ、おいらが寿命が50歳までだなどと暗い話をするのがいけないのである。そんなこと言われたら、誰だって返す言葉がなくなる。おいらだってそうだ。だからそんなことないよと否定して、励まそうとするのはごく自然なことだ。でも、他にもっといい切り返しがあるとすれば、それは何だろうか。おいらだったらこんな切り返しされたら面白いなというのを、ちょっと紹介しよう。

 例えば、「50歳までというその根拠はなんなのか」と理詰めでつっこんでくるのも面白い。一瞬こっちがたじろいでしまうが、病気や寿命について本心では話したい気持ちがあるのだ。だから、遠慮なく色々聞いてくれるのは、むしろ嬉しい。そういうことは、普通は聞いてはいけないことのように感じて聞きづらいものだが、聞いてくれると相手をより理解しようとしてくれる姿勢を感じて、好感がもてる。他には、「それなら残りの人生で何がしたいか」というように、短いなりの将来計画を聞いてくれることだ。そのほうが話が発展して盛り上がる。共通しているのは、どちらの例も、寿命が短いということを必ずしもネガティブに捉えていないことだ。短い寿命を冷静に捉えて、それはそれで一つの人生として考えてくれている気がするのだ。

 来月で誕生日を迎え、50歳まではあと8年になる。それは一般的には非常に短い余命だが、おいら自身はまだ8年もあると思っている。「ゾウの時間ネズミの時間」という本では、全ての生物は生涯に打つ心拍数は大体同じで、ネズミのように心拍が早い種はその分寿命が短く、ゾウのように心拍が遅い種は寿命が長いと述べている。この理論を当てはめてみても、おいらのような先天性心疾患者は、日常的に心拍が早いので寿命が短くなると予想される。本の理論が本当に当てはまるかはわからないが、おいらは時間が早く流れている世界に生きているだけなのだ。

入院ランキング

よく雑誌などに病院ランキングが出ていたりする。それは手術実績や病床数などを基にして、主に医療技術や施設の充実度で評価されている。もちろんそれらは極めて重要なポイントではあるが、入院患者にとってそれと同様に気になるのが入院生活の実態であろう。おいらは、この数年で5つの病院に入院した。5つではランキングをつけるほどの数ではないが、今日はそれぞれの病院の入院環境をおいらの印象で勝手に評価してみよう。ただし、病院名は伏せておく。また、順番=ランキングを意味しない。

 

①NC病院:おいらが最もお世話になった子供専門の病院

  1. 入院理由:PLE治療、不整脈停止、フォンタン再手術、消化管出血、手術創部化膿、カテーテル検査
  2. 病室:大人が入院すると無料で個室に入れてくれる。
  3. テレビ:約30時間/1000円、イヤホンなしで視聴可。
  4. 冷蔵庫:なし。冷蔵しておきたいものはナースステーションで預かってくれる。ただし飲み物だけ。
  5. 院内食:かなり美味しい。果物やデザートもよく出る。10時と3時にはおやつもあり。しかし、地獄入院の時はなぜかとてもまずく感じた時期があった。
  6. 採血、点滴ルート取り:すべて医師がやる。かなりうまい。ベテランの先生だと痛みすらほとんどない。
  7. 食堂・売店:小さい。 共有スペース:プレイルームがある。家族と食事はできない。
  8. 図書室:蔵書数少ない。貸し出しあり。新聞あり。漫画あり。
  9. パソコン、ネット:パソコン使用可。ネットは食堂やロビーにフリーWiFiが飛んでいる。
  10. 看護師:子供病院だけあって、服が可愛い柄。保育士さんみたいに優しくて素朴な雰囲気。男性も多い。
  11. 医師:担当医が一日に何度も回診にくる。それ以外にも複数の医師が来る。丁寧に説明してくれる。
  12. その他の特色:心電図やサチュレーションのコードを24時間つけていなくてはいけないのがかなりうっとおしい。夜中に検温があったりする。点滴ルートは詰まるまで無期限で刺しっぱなし。散髪を月一ボランティアでやってくれる。病院祭やおやつバイキングなどのイベントもあって患者が飽きない工夫がされている。冷えた麦茶が常備されていていつでもくれる。
  13. 総合評価:全体的に非常に快適で、おいらが一番好きな病院。

 

②TJ病院:子供の頃3度手術を受けた病院。大人になってからは一度。心臓外科では国内最大級で名門中の名門。

  1. 入院理由:カテーテル検査
  2. 病室:古い汚い。4人部屋でも有料。
  3. テレビ:約10時間/1000円ほど。イヤホンで視聴。
  4. 冷蔵庫:記憶なし 院内食:微妙。
  5. 採血、点滴ルート取り:医師がやる。腕は普通。
  6. 食堂・売店:コンビニやコーヒーショップなどいろいろあり。
  7. 共有スペース:なし
  8. 図書室:蔵書数多い。貸し出しなし。新聞不明。
  9. パソコン、ネット:パソコン使用可。ネット不可。
  10. 看護師:都心だけあって厚化粧でセクシー。
  11. 医師:一日に担当医が何度か回診にくる。女医もセクシー。
  12. その他の特色:30年以上前から全く変わっていない雰囲気。
  13. 総合評価:カテーテル検査後の止血に失敗して大量の内出血を起こすなど悪いイメージしかない。

 

③OSセンター:NC病院の先生から紹介された関西の病院。

  1. 入院理由:カテーテルアブレーション
  2. 病室:広く綺麗。
  3. テレビ:約15時間/1000円くらいかな。
  4. 冷蔵庫:記憶なし 院内食:美味しい。
  5. 採血、点滴ルート取り:看護師がやる。腕は普通。
  6. 食堂・売店:コンビニなどいろいろあり。
  7. 共有スペース:動ける患者は病室ではなく、共有スペースで食べる。そのため患者同士が仲良くなる。
  8. 図書室:不明。
  9. パソコン、ネット:パソコン使用可。ネット不可。
  10. 看護師:関西だけあって明るくてノリが良い。
  11. 医師:一日に一人1、2回、3人ほどの医師が回診に来る。
  12. その他の特色:病棟の廊下がとても広く歩行リハビリに適している。
  13. 総合評価:広々として快適だった。共有スペースで食事は良い。

 

④SD病院:NC病院と連携している大学病院。

  1. 入院理由:カテーテルアブレーション、消化管出血 病室:普通。
  2. テレビ:約11時間/1000円。
  3. 冷蔵庫:一日200円。ただし無料製氷機があり、氷を袋に詰めて保存すれば無料で冷蔵できる裏技が使える。
  4. 院内食:普通。ただし、消化管出血時にでた特別食のやる気のなさがすごい。強制収容所なみ。
  5. 採血、点滴ルート取り:看護師がやる。ミス多い。
  6. 食堂・売店:コンビニ、コーヒーショップ、ケーキ屋などいろいろあり。
  7. 共有スペース:広い。移動売店も来る。家族と面会や食事できる。
  8. 図書室:蔵書数多い。貸し出しあり。新聞なし。漫画あり。
  9. パソコン、ネット:パソコン使用可。ネット不可。
  10. 看護師:色々なタイプの人がいる。男性も多い。気に入った患者に入り浸る。
  11. 医師:一日に一人1回、二人ほどの医師が回診に来る。あまり説明してくれない。
  12. その他の特色:熱いほうじ茶がいつでも飲める。検査で数日待たされる。
  13. 総合評価:ごく一般的な大学病院。

 

⑤ONセンター:南の島の総合病院。

  1. 入院理由:大腸ポリープ、心筋梗塞
  2. 病室:かなり広い。
  3. テレビ:約20時間/1000円。
  4. 冷蔵庫:一日100円。
  5. 院内食:普通。米は美味しくない。
  6. 採血、点滴ルート取り:看護師がやる。腕は普通。
  7. 食堂・売店:コンビニ、コーヒーショップ、食堂あり。
  8. 共有スペース:狭い。家族と面会や食事できる。子供の患者が遅くまで遊んでいる。
  9. 図書室:蔵書数少ない。貸し出しあり。新聞なし。漫画あり。
  10. パソコン、ネット:パソコン使用可。ネット不可。
  11. 看護師:比較的若い人。男性も多い。対応はサバサバとして必要以上の会話はあまりしない。
  12. 医師:一日に1回、複数人で回診に来る。あまり説明してくれず、さっさと帰る。 その他の特色:飲水量や尿量の測り方が大雑把。
  13. 総合評価:島の人柄なのか全体的に適当なのが良い。

 

 並べてみはしたものの、我ながらなんの面白みのない情報だったな。おいらにとって入院が快適かどうかは、まずパソコンが使えることである。ほとんどの病院の入院案内書にはパソコン持ち込み禁止と書かれているが、上記の5つの病院は実際持ち込んで使用しても何も言われなかった。さらにネットが使えるとありがたいが、今の所NC病院だけが限られた区域でのみフリーWiFiを提供しているに過ぎなかった。今後はもっと多くの病院で普及してほしい。図書室には、医療関係の本を充実させてほしい。入院中にじっくり自分の病気のことや薬、治療のことを学ぶのは患者にとっていいことだと思う。

 また、いつでもお茶や氷を提供してくれるととてもありがたい。わざわざ自分で買うとお金もかかるし、ベッドから動けない人などはどうしたらいいのか不安である。テレビはともかくも、冷蔵庫も無料にしてもらうか、もっと安くする、あるいは預かってくれるなどしてくれると嬉しい。衛生面でもその方が安全だと思う。そしてなにより、担当医が一日に何度か回診しに来てくれるととても嬉しく思う。一人の担当医が何度もではなくてもいい。複数の医師がかわりがわりでもいいから来て欲しい。患者は色々聞きたいことがあっても、一日一回の回診では聞きそびれてしまったりする。かといって質問事項をメモ書きして、臨戦態勢を整えるのは構えすぎて緊張してしまうので、度々来てくれれば聞きそびれたことを聞けたりする。要は、長い長い退屈な入院生活が、パソコン、図書館、買い物、飲食、診察などでできるだけ時間を潰せる環境にあると、快適なのである。

贅沢な薬

先日の心筋梗塞の入院後、大幅に薬が増えてしまった。これまでのものと合わせるとその数22種類。今日はそれを一覧表にしたので、お見せしたい。以下が現在おいらが日常的に使っている薬である。薬の名前とその簡単な効果、一錠あたりの量、薬価、1日あたりの服用数、そして1日あたりの薬価を示した。

             
番号 効果 mg 薬価(円) / 薬価/
1 ゼーチア コレステロール低下 10 185.3 1 185
2 ピタバスタチンCa「サワイ」 コレステロール低下 2 46.3 1 46
3 ピタバスタチンCa「サワイ」 コレステロール低下 1 39.8 1 40
4 ワーファリン 血栓予防 1 9.6 1 10
5 ワルファリンK 血栓予防 0.5 9.6 1 10
6 バイアスピリン 血栓予防 100 5.6 1 6
7 エフィエント 血栓予防 3.75 276.1 1 276
8 アゾセミド「JG」 利尿剤 60 16 1 16
9 ムスカ 利尿剤 7.5 1277.3 3 3832
10 トリクロルメチアジド「NP」 利尿剤 1 6.1 1 6
11 アレンドロン酸 骨強化 35 204.1 0.14 29
12 アドシルカ 肺血管拡張 20 1770 1 1770
13 フェブリク 尿酸低下 10 31.7 1 32
14 フェロ・グラデュメット 鉄分補充 105 8.4 1 8
15 ウルソデオキシコール「トー 胆石予防 100 6.5 3 20
16 アミオダロン塩酸塩 不整脈 50 80 1 80
17 セララ 血圧低下 50 85.6 2 171
18 リーバクト配合顆粒 肝臓庇護 4150 178.5 3 536
19 ランソプラゾールOD 胃腸薬 15 26.4 1 26
20 プレドニン PLE予防 5 9.6 1 10
21 プレドニゾロン PLE予防 1 8.1 3 24
22 ハイゼントラ IgG補充 20 33032 0.07 2359
          日合計 9491
          月合計 284745

 

 11番目のアレンドロンは週に1回飲み、22番目のハイゼントラは2週に一回点滴している。それ以外は毎日朝昼晩に分けて飲んでいる。特に多いのは朝で、錠剤が21粒、粉薬が一袋ある。長年薬を飲み慣れたおいらは、21錠を一度に口に入れて飲むことができる。入院して極度の水分制限がかかっている時は、20ccくらいしか薬を飲むのに使えなかった時もあったから、水分制限のない今なら21錠だろうが余裕である。

 唯一の粉薬であるリーバクトは、まずいという評判である。確かに、水に溶けないし、量が多いので飲みにくい。これを20ccで飲んだ時は流石にきつかった。が、今は錠剤と合わせてコップ一杯の水を潤沢に使って、綺麗に飲み干すことができる。

 これだけの薬を飲むと、むしろそれで病気になりそうな気分になる。しかし、もっと気が滅入るのは、合計薬価だ。1日あたり約9400円、月にすると28万円以上になっている。年間約350万だ。薬のコスト有効度という考え方がある。ある薬にかかる価格(コスト)に対し、それを使うことによって患者がどれほど延命できるか(有効度)という考えだ。コストに対し延命できる期間が長いほどコスト有効度が大きい。この考え方には、患者自身の社会的な役割といったことは全く考慮されない。全ての人の命は等価であり、全ての人の命は生かすべきであるというのが大前提だ。

 おいらのコスト有効度は大きいか小さいかは今はわからない。ともかく、毎日9400円の薬を使って、ある意味とても贅沢な生活をしているのだということを噛み締めて、ありがたく一日一日を大切に生きていきたい。

総痛み量

今回の心筋梗塞の入院では、当然ながら様々な痛い出来事が続いた。入院中は、痛みのレベルを1から10で聞かれることが度々あり、10は涙が出るほどの痛みらしい。最初にあった胸や腕の痛みは大したことはないので痛みレベル2くらいだった。点滴ルートの注射や血液検査の注射は、入院期間中15回ぐらいあったが、一瞬なので各回痛みレベル2か3だった。まず最初の難関は導尿カテーテルの挿入で、これは過去の経験と同様超痛くてレベル7くらいだった。

 痛みは他にも続いた。CTの造影剤を入れると体が熱くなるが、痛みというほどではないので、痛みレベル1だ。カテーテルでは右の足の付け根から入れることになった。局部麻酔の注射は、何か虫にでも鋭く噛みつかれているような強い痛みで、レベル8だった。でも過去に受けたカテーテルに比べると割と楽な方だった。これで、もうカテーテルの痛みはほぼ終わったなと安堵し、珍しくカテーテル中にウトウトと安らかな気分になれた。しかし、痛い出来事はこの後も次々と襲ってきた。

 カテーテル後に感染が疑われ、血液培養試験が行われた。その際足から採血したため、足首や脛のあたりの骨に隣接した血管に刺されズキッと鋭く痛かった。しかも失敗し合計3回刺された。痛みレベルは6だった。カテーテルのシースは、止血できない危険があり検査後すぐに抜かなかったため、翌日再び局部麻酔を打たれて抜いた。その時の痛みレベルは7。カテーテルは毎回そうだが、シース穿刺部をしっかり抑えて止血するため、分厚い粘着テープを太ももから腰にかけ十字にがっちりと貼り付けられる。そのテープを剥がすときは、リムーバを使うものの、肉がちぎれるのではないかと思うほど痛かった。おそらく長年のステロイドの影響だと思うが、おいらの皮膚はとても薄く弱くなっているために、強烈な痛さだった。痛みレベル10を振り切れ、12くらいありそうだった。ぎゃあぎゃあと唸ってしまった。そのあと、導尿カテーテルを抜かれたが、それは大したことがなく痛みレベル4。そして、最初のカテーテルから2週間後、治療した部位の確認のため再びカテーテル検査を行った。その痛みレベルは、麻酔、テープ等全体で25ほどだった。入院中は他にも胸痛や神経痛が起きたが、それらの痛みレベルは大したことはない。こうした痛みレベルを合計すると100を超えるほどとなった。

 病院では、いつの頃からか痛みレベルを数値的に表現するのが流行り出したが、それならば入院期間中のトータルの痛みレベルを把握し、合計値がある上限値以下にすることも今後の医療のあり方として検討してもらいたい。総被ばく線量の上限値があるようにだ。痛みレベルの場合は、例えば同じ100でも、レベル1を100回とレベル10を10回とでは後者の方がはるかに苦痛だろう。そういう意味では上限を設ける意味はあまりないかもしれないが、患者がどれだけ多くの痛みを経験しているかを理解してもらうためにも、総痛み量の把握していただきたい。