ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

心臓

強がる心、弱い心臓

先日、数年ぶりに旧友から連絡が届いた。おいらが黄金期だった時の友人だ。おいらが今南の島で住んでいることを伝えると、旅行がてら行ってみようかと話してきた。が、おいらは、おいらに会ってもつまらないから来なくていいと言ってしまった。本当は会いた…

APCフォンタン術患者の30年後の運命

まさに自分が該当する興味深い論文を見つけたので紹介したい。 Chin Leng Poh et al. (2017) Three decades later: The fate of the population of patients who underwent the Atriopulmonary Fontan procedure. International Journal of Cardiology 231:9…

3%で変わる生き方

フォンタン再手術後から、おいらのサチュレーションの値が少し下がっているのがずっと気になっていた。手術前は96%ほどだったが、手術後は93%ほどしかいかなかった。先日、今診てもらっている医者にそのことを聞いたところ、ようやくそのメカニズムがわか…

チキンレース

おいらの体には致死性の病気がいくつも潜んでいる。まず本家の心臓は、不整脈などによる急性心不全で突然死する可能性がある。そうでなくても心機能が年々低下し心不全になるのは避けられない。それから先日切除した大腸ポリープは異常な数と増殖速度だった…

古傷

数々の手術、検査を繰り返してきたおいらの体には、たくさんの傷跡が残っている。一番大きいのは、胸にある開胸手術の手術痕で、胸の真ん中と右脇にT字のような配置でそれぞれ20cmほどのものがある。真ん中の傷は過去に3回開けており、3歳、12歳、39歳の時に…

渋滞が渋滞を引き起こす

おいらの住む南の島では、至る所で渋滞が発生している。その原因は、車の台数が多すぎるためだそうだ。県民一人にほぼ一台の割合で持っているらしい。さらに、暑い気候のため、ちょっと出かけるにも車を利用するのが習慣になっているせいもある。渋滞を避け…

永遠に続く砂漠

また、再手術の話を再開しよう。 2度目の手術を終え、目がさめると朝だった。もちろん朝だとわかるのは後々のことで、実際はICUでは窓もなく時間の感覚もない。しかし、時間の感覚がないことは実は患者にとってかなりストレスになる。後日記録を見ると、午…

血の海を渡ると地獄

また、フォンタン再手術の話を再開しよう。 術前の説明では、手術時間は12時間と予定された。一番時間がかかるのは、心臓に到達する前に心臓と胸骨の癒着をはがすことである。過去に心臓手術を受けたことのある人は、心臓が周囲の組織と癒着していることがよ…

人工心肺、結構心配

手術の6日前に入院が始まった。入院するとすぐに、レントゲン、心電図、CT、採血、エコー、肺機能検査と、休む暇なく検査を受けた。さらに、その頃はPLEが再発していたため血中タンパクがかなり低く、点滴でアルブミンとグロブリンの補充も受けた。タンパク…

心臓に毛を生やそう

4年ぶりに学会に参加して研究発表を行った。昨年と一昨年は、入院していたため参加できなかった。学会参加だけでなく、ここ数年おいらは闘病に精一杯で、論文も出せず、調査もできず、まともに研究活動をしていなかった。論文は科学雑誌に投稿するものの、…

断捨離は心臓に悪い

南の島へ向けた引越準備を進めている。できるだけ荷物を減らそうと、思い切って本や過去の資料などを処分することにした。紙の資料はできるかぎりスキャナーで取り込んで電子化し、実物は廃棄した。おいらは、4年前からの第2の闘病時代からの血液検査の結果…

体調、神ってる。

ここ数年、年末年始のころはいつも体調が悪かった。そのためか、気分も落ち込み年が明けてもとてもめでたい気分にはなれなかった。今年の初めもまた気分が落ち込んでいて、それが祟ったのか地獄入院につながった。しかし、今年は違う。極めて体調が良いのだ…

痛みでよみがえる記憶

今年の始めから、朝起きてから午前中の体調がすぐれない。その傾向は、地獄入院から退院した現在も続いている。大体は朝は寒気がして、寒気が酷いときには吐き気もある。体がだるく脈がやや速く息苦しい。朝食後少し横になって休むことも多いが、なかなか良…

PLE発症後の余命を予測する

蛋白漏出性胃腸症(PLE)は、フォンタン術後症候群の中でも特に予後不良とされる深刻な合併症である。その発生率はフォンタン術患者のうち4〜13%で低いものの、一度発症してしまうと治療に難渋し、根治はかなり難しい。死亡率も高く、当初は5年生存率50%程…

スモールフレンドリージャイアント

子供の頃、よく見る夢があった。真夜中の街を巨人が徘徊する夢である。巨人の姿は見えず、どすんどすんと足音だけが聞こえ、おいらは家で寝ながら足音が近づいてくるのをじっと聞いていた。不思議と怖さはなかった。むしろ、巨人は散歩でもして楽しんでいる…

医者が望む理想の患者

今日は山田倫太郎くんの「患者が望む理想の医者:8か条」について、おいらなりのひねくれ解釈をしてみよう。彼は、先天性の複雑心奇形を持ち、たびたび手術を受けながら今も闘病を続ける中学生である。山田くんと8か条については、日テレの24時間テレビで…

心臓が教えてくれる

前回自分なりの経験に基づく教訓を紹介したので、今回ももう一つそんな教訓についてお話ししたい。 自分に迫る危機や困難がどのくらい深刻なのかはなかなかわからない。それは頭で思っているよりも実際はもっと深刻だったりそうでもなかったりする。しかし、…

我慢し続けると人生が終わる

地獄旅行を再開しよう。 おいらには、自分のこれまでの経験に基づいた教訓がいくつかあり、それらの教訓はとても信頼している。そんな教訓の一つに、「どんなつらいこと痛いことも、我慢し続ければ終わる」というものがある。 例えば、心臓病患者が受けるカ…

モンスターパティエント

腹水の水抜き入院から、無事退院できた。連日ラシックスとソルダクトンを点滴で日に3回打ち続けた。約一週間で体重は3kg、腹囲は5cmほど減った。点滴による利尿剤はすごい効果である。点滴を打ち始めた最初の日は、おしっこが3L近くもでた。その後はでる…

クリームパン足とアンパン腹

数日前から、腹水がひどくなってきた。それに伴って体重も増加し続けている。2週間前と比べて3キロ近く増えた。今の体型はお腹だけがポッコリと異様にでていて、妊婦さんを体験した気分だ。 お腹以外に足先もまた、特に水が溜ってむくみ足の甲や指はパンパ…

奇跡の終焉

おいらは、13歳のときフォンタン手術を受けた。フォンタン後の体の変化は劇的だった。顔や爪や唇の色は、紫色から血色の良いピンク色にかわり、ばち指はなくなり湾曲した爪はまっすぐに延びはじめた。走ることができ階段も息切れすることなく登れるようにな…

フォンタンの革命

フォンタン手術は、先天性心疾患に対する手術の中でも特に革命的であった。1971年にフランスのフォンタン医師が、二心室修復の不可能な先天性心疾患に対する根治手術としてこの手術法を考案した。それまでは、そうした心疾患を持つ子供たちになすすべき手は…

大人になる心臓

先天性心疾患を持って生まれた子供たちは、自分がどんな病気なのかをわからない。わけのわからないまま、検査入院手術を繰り返し、生き残ったものたちが成人になっていく。その間、病気のことは親が必死に調べたりしている。当の本人は気楽なもので、病名す…

自己紹介

初めてのブログ初めての投稿なので緊張している。一体何からどう書いていっていいのかとあれこれ悩んでしまうが、そう悩んでいるうちにブログを始めるまでに年月が過ぎていってしまった。でも、緊張や悩みは心臓にストレスを与えよくないので、あまり深く考…