ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

クリームパン足とアンパン腹

数日前から、腹水がひどくなってきた。それに伴って体重も増加し続けている。2週間前と比べて3キロ近く増えた。今の体型はお腹だけがポッコリと異様にでていて、妊婦さんを体験した気分だ。

お腹以外に足先もまた、特に水が溜ってむくみ足の甲や指はパンパンである。破裂するのではないかと不安になるほど膨らんでいる。歩いたりして足首が曲がるとパツパツになって痛い。そういう足をクリームパン足と呼ぶらしく、足裏の筋肉がおとろえるとなるそうだ。お腹もまた、圧迫骨折を保護するコルセットを長期につけているため、腹筋がなかなかつかない。水分は筋肉がないところに集中してたまるようだ。心臓や腎臓に問題がない人であれば、筋トレとストレッチで徐々に改善していくのだろうけど、おいらは腎臓の機能が低下しておしっこがあまりでないので、自力での水分の排出には限界がある。腹水は過去に経験がないほどひどくなってきたので、残念ながら緊急入院とあいなった。しばらく点滴でラシックスという利尿剤を打ち水抜きすることになった。

ラシックスは強力な利尿薬にもかかわらず、医師の処方がなくても簡単に手に入るらしい。薬を飲めば数時間のうちに尿が1リットルやそれ以上どばどばとでるため、ダイエットなどで素早く体重を落としたい人が使ったりする。ラシックスという名前は、その効力が6時間だからだそうだ。でもこの薬、医療関係者の中では、自分では絶対使いたくない悪名高い薬という噂がある。それは、強力なだけに腎臓のダメージが大きい上、その効果が徐々に効かなくなってくるからだ。おいらもまた、初めてラシックスを投与されたときはすごく効いた。打ってから30分程度でものすごい尿意がして、一気に400cc近くでた。それが30分おきに4回ほど続き、その後も時間の間隔は長くなりつつもで続けた。数時間で、2リットルくらいはでたと思う。しかし、ラシックスを乱用しまくったおいらの体は効きが悪くなり、今となっては当初の倍の量を打ってもでる尿量は半分以下に減ってしまった。

おいらは、普段から飲み薬でサムスカ、ダイアート、セララ、ニュートライドといった利尿薬を飲んでいる。もう最大量に近い量である。それでも一日にでる尿量は良くて1.5リットルくらい。いずれ、尿が全然でなくなり、透析の運命が待っているのだろう。そのまえに、腹水などが破裂するかもしれない。そんなわけだから、水分を取ることを躊躇してしまう。でも、今は水分制限はなく、特にサムスカを飲んでいるときには水分をこまめに取らないと、脱水症になったりする。また、水分摂取量を減らしすぎると、体に老廃物が溜りさらに腎臓を痛める。長らく水分制限に苦しんできたおいらにとって、水分を自由にとれることは天国のようだ。でも、飲めばむくむのではという不安が、天国の裏側にある地獄をかいま見てしまう。天国経由地獄行きという寝台列車の旅が始まったのだった。

先天性心疾患の患者が避けられない水分制限の地獄は、またいつか話したい。今日はここまで。