ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

SW=生物多様性

おいらは、生物多様性を研究している。なぜ生物は多様なのか。どうやって多様性は維持されるのか。多様であるとなにがおこるのか。おいらにとって、生物多様性はなんとも不思議な存在であり、なぜか魅力的なのだ。

 おいらが、生物多様性に興味を持ったのは、ほかでもなく映画STAR WARSのおかげである。そのためではないが、スターウォーズは最も好きな映画でもある。スターウォーズの魅力はあげればきりがないが、中でも映画に登場する生物多様性がすごい衝撃的であった。それを象徴するのが、第一作目エピソード4の酒場のシーンである。主人公ルークとオビワン、それにロボット2体が、自分たちを運んでくれるパイロットを探しにモス・アイズリー宇宙港を訪れる。そこで、優秀なパイロットがいるという悪党がたむろす酒場へ入っていくのだが、酒場の中には銀河中のさまざまな生物が集まっていたのだった。次々と画面上に現れる怪物のような生物たち。だれしもが、人間と同じように振る舞い、ある者は楽器を演奏し、ある者は酒を飲み会話を交わしていた。話す言語も様々だった。ごぼごぼと雑音にしか聞こえない言葉もあった。なんて宇宙は広いんだろう。宇宙のどこかにはこんな世界があり、様々な生命体がうごめいているのかもしれない。フィクションとはわかっていても、その壮大さに完全に心を奪われたのだった。

 地球上では我々人類が生命の頂点に位置すると錯覚してしまう。最も知的で、他のあらゆる生物に多大な影響を与え、他のあらゆる生物ができないことを成し遂げる。しかし、スターウォーズの世界では人間は一種族にしかすぎない。そこがまた魅力的だった。地球外に生物がいるかは、今はまだわかっていない。いる可能性は示唆されているものの、いたとしても微生物のようなものだろうとも予測されている。だとすれば、人間のような生命体は宇宙の中で他にいないのだろうか。それはなんだかとても寂しい。人間はロケットで宇宙空間に飛び立つことができるようになったが、まだその距離は地球からほんのわずかな範囲に限られる。到底、他の惑星に行って新たな生物にであうことはできそうにない。だとすれば、別の惑星から宇宙船にのって地球に訪れる生物がいてほしい。だから、UFOや異星人の目撃談もまたおいらはとても興味があるのだ。スターウォーズは、そんなおいらを夢を叶えてくれる映画だった。

 地球上の生物多様性は、その意義について科学者によってさまざま議論されている。おいらも生物学者の端くれとして、生物多様性の意義は理解しているが、正直そんなこととは全く関係なく、こどもの頃初めて酒場シーンをみたときのあまりの興奮と衝撃が未だ忘れられないのだ。生物多様性に触れるとそうした興奮や衝撃がよみがえり、心が躍ってしまうのである。なんだか面白くて仕方がなくなってしまうのだ。