ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

障害は自己PRになるか

ここ最近のおいらの主な活動は、就職活動である。つい先日も、筆記試験と面接を受けてきた。来週もまた、面接を受けに遠方へ赴く。就活では、おいらは病気のことを正直に打ち明けることが多い。応募書類に書いたり、面接のときにも話したりする。しかし、現実には病気のことを話してしまうと不合格になる可能性が高いだろう。もちろんあからさまにそんなことをすれば障害者差別になるだろうが、職務内容に体力が必要な業務が明記されていることも多く、暗に断られていることがままある。だから、病気のことは話さず応募しようかと毎回悩む。実際、応募書類に健康診断書などを求められなければ、表記する義務はない。自分に不利になるようなことはあえて書く必要はない。

 だが、病気は酒癖が悪いとか変な性癖があるとかと違い、欠点とはいいがたいところがある。それに、おいらの先天性心疾患は一生ものであり、なくなることがない。だから、もし採用されて働き始めれば早々に分かってしまうことだろう。あとで分かってこんな人とは思わなかったといわれても、やるせない。それに病気と知らず、体力的に無理な仕事をいろいろ頼まれてもできない。そんな訳で、後でお互いに後悔しないためにも、あらかじめ知ってもらった方がいいだろうと思って話している。

 応募書類には、できるだけ病気を持つことがプラスになるように書いている。たとえば、病気があることで人とは異なる経験をしたとか、独自の考え方が身に付いたとか。あるいは、業務内容が障害と関係づけられば、その点をアピールするなどだ。たとえば、里山創成学の研究職では、障害者にとっても生活しやすい里山創成をめざすなどとアピールした。

 残念ながらいまのところ採用には結びついていない。客観的に考えれば、おいらのように半年近くも入院したり、しょっちゅう通院したり、一日中働くのがしんどいような人物を雇用したいとは思わないだろう。今おいらは、フルタイムの職ばかり応募しているが、実際にフルタイムで働けるか不安がある。週5で40時間が基本で、ときには残業や出張、休日出勤もあるだろう。今のおいらの体力ではとてもこなせそうにない。そうなるとパートタイムの比較的楽な業務の職しかないが、そういう職は給料も安く、とても妻と子供3人で食べていかれない。現実的にはフルタイムの職は、障害者本人にとっても雇用側にとっても厳しいのである。

 おいらは、週5日・一日8時間、集中して勤務することは土台できないと諦めている。だから、8時間のうち人一倍集中する時間を作り、その時間で一日分の成果が出せるよう努力していきたいと思う。そして、目指すはおいら独自のオリジナルな仕事のスタイルを確立し、その職場で唯一無二な役割を果たせるようになることだ。障害者は意外にもそういう役割を演じやすい存在だと思う。たとえば、すごく単純なことだけど、仕事中ちょっとお茶して休憩しようとかは、障害者だからこそいいやすい特権に思う。その延長で、残業はやめよう、休日出勤もやめよう、もっとのんびり仕事しようなんてことも障害者だからこそ説得力を持っていえるかもしれない。障害者は、今問題になっている長時間労働、過労、ブラック企業を解消する救世主になるかもしれないのだ。だったら、なおさら企業側からすれば、障害者は厄介者かもしれないね。