ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

一番効く薬

おいらは、毎月1、2回検診で仕事を休んでいる。一般的な企業では病欠という休暇の制度がない。病気で休む時は、有給休暇を消化するか、減給覚悟で欠勤扱いになるしかない。そして今の職も、会社に雇用されているので、やはり病欠休暇というものがなかった。しかしそれ以前は、大学に雇用されており、大学では病欠休暇がたんまりあった。多少大学によって差があるかもしれないが、国立大学の場合は、有給休暇とは別に、年間90日間まで病欠休暇を取得できるのだ。この間減給されることなく、給料が支給される。とんでもなく、手厚い制度である。でも、そのおかげでおいらは昨年度まで、数々の入院や検診を減給されることなく行くことができた。本当にありがたい制度だった。

 今は、もうその恩恵を受けることはできない。そのため、検診で休むときは有給を使ったりもするが、有給休暇の日数も年10日しかなく、正直足りない。そのため、すでに何日か、欠勤扱いで行っている。それに、週5勤務が数週間続くとかなり疲れが溜まってくるので、できれば時々休みたい。しかし、それも欠勤になってしまうので、仮に休んでも気持ち的に休んだ気になれない。

 そうこうしているうちに、おいらの体調は入院の瀬戸際まで落ちてきてしまった。あともう少し低タンパクや貧血の程度が進めば、入院である。これは危険だということで、今月から鉄剤の飲み始め、ハイゼントラの回数を増やし、てこ入れを図った。おかげで、先日の検査では貧血は少し良くなったが、血中タンパク質は相変わらず低いままだ。そして、先日の検査では、腹部エコー検査も受けた。その結果は残念ながら思わしくなかった。従来通りではあるが、腹水があり肝硬変に進行している状態だった。その状態は非代償性肝硬変と呼ばれるもので、肝臓の機能を十分果たせなくなった状態だそうだ。そうなってしまうと、もうC型肝炎の治療を受けることもできない。そして、さらに追い撃ちをかけ、エコー検査の際、腫瘍と疑われる影が肝臓内に発見されたのだった。次回その診断のため、造影CTを受けることになった。

 おいらの血中タンパク質が上がらないのは、蛋白漏出性胃腸症によるものだとずっと思っていたが、肝機能の低下も大きく関係しているだろう。今の肝臓では十分にアルブミンを合成できないのだ。そのため、少しでも肝臓の負担を楽にするため、リーバクトというアミノ酸サプリメントのような薬も再開することになった。この薬は以前は飲んでいたのだが、去年の秋頃状態が良くなったため飲まなくなった。粉薬で一日3回で量も多くまずい。

 テコ入れで色々薬が増えてきたが、おいらにとって本当に必要な薬は休みである。有給休暇日数を増やしてくれるか、病欠休暇を認めてくれるのが理想である。だがそんなことは認められるはずはなく、結果さらに薬が増えやがて入院し、膨大な医療費がかかるのだろう。それは有給という薬で、おいらに支払われる金額よりはるかに多くなるかもしれない。だったら安上がりの有給薬を処方してくれた方が、おいらにとっても社会全体に取っても負担が少ないはずだ。もちろんそんな屁理屈は厳しい大人社会で通用するわけがないので、おいらは毎日山盛りの薬を飲み続けることになるのだろう。もう、いっそ一日10万円分くらいの薬をガバガバ飲んでやる。