ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

弾切れ

先日の予想は見事に外れた。が、それはいい方向でのハズレだった。タンパクはわずかながらさらに改善したのだ。フルイトランによる絶妙なコントロールが効いたのだ。次の診察は3週間後になった。今後もフルイトランを飲む量を調節すれば良い状態を安定できるだろう。

 しかし、肝心のフルイトランの残薬数が明らかに足りなそうなのだ。前回の診察時に、薬を控えめの数しか処方してくれなかったのだ。正直足りるかなと不安に思ったが、なんとかなるだろうと高をくくってしまった。結局、先週までの経験通り、飲まない日を1日でも作ると確実に体重が増え、今日の時点で体重が51kgを超え入院危険域に入ってしまった。次の診察まで残り15日。手元にある薬は12錠。体重維持のためには1日1錠は最低必要だが、それすら足りない。さらに体重を減らすには時々1日2錠飲む必要がある。このまま途中で弾切れになれば完全に負け戦である。なんとか、薬を節約して乗り切るしかない。

 入院危険域になってからは案の定体がだるく、頭も重くちょっとした運動で息が苦しくなってきた。仕方なく今日も朝に1錠飲んで水を抜いた。あと11錠。これを2週間でどう配分するかが勝負である。だが実はおいらには、隠し持った兵器がまだある。それは1年以上前に処方され、余らしていた別の種類の利尿剤である。ヒドロクロロチアジド(ニュートライド)という薬で、フルイトランと同じサイアザイド系の利尿剤である。これも非常によく利尿剤だった。

 利尿剤にはいくつか種類があり、それぞれ効き方が異なる。おいらは、このサイアザイド系以外に、ループ系のダイアート、K保持系のセララ、バソプレシン拮抗系のサムスカを飲んでいる。入院するとダイアートがラシックスに、セララがアルダクトンに、と同じ系の別の薬に変わったりした。だからきっとフルイトランの代わりにニュートライドを飲んでも大丈夫だろうとまた高をくくっている。だけど、おいらは高をくくってこれまでろくな事は起きていないのだ。例えば、このブログの題名に貼り付けてあるヘリコプターの写真は、おいらが高をくくって起こした大事件を写したものである。その話はまたいつかしよう。