ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

注射が痛い部位ランキング

ここ何回か少し暗い話が続いてしまったので、たまにはくだらない小ネタ話でもしよう。おいらはこれまで身体の様々な部位に注射を刺されてきたが、その中で痛かった部位をランキング形式で発表したい。 

第10位 耳たぶ

 これは誰でも知っている通り、神経がほとんど通ってなくメスなどで切りつけてもさして痛くない。子供の頃の入院では、ほぼ毎朝耳たぶから毛細管採血法という方法で採血されていた記憶がある。

第9位 二の腕

 ハイゼントラを打つ部位の一つで、一度試したことがある。刺す時の痛さはほとんどなかったが、液が入っていくとそのうちかなり痛くなってきた。今回は刺す痛みのランキングなので、9位とした。

第8位 お腹

 同じくハイゼントラを打つ部位の一つで、おいらがハイゼントラを打つ時メインで使っている。特に脇腹のぷよぷよにたるんだところがよく、保冷剤で冷やした後で刺せばほとんど痛みはない。ただし打ち所が悪いと時に奥の方でズキッと痛む時がある。

第7位 モモの裏側

 やはりここもハイゼントラを打つの部位で、一回試した。刺す痛みはなんだか虫に刺された時のように少しチクっとする。しかし辛いのが輸液を入れている時で、徐々にすごく痛くなってくるので、もう二度と打つ気はしない。

第6位 腕

 腕は肘の内側から手の先に向かうほど痛みが強くなる。肘の内側は一般的に最も採血で利用される部位で、看護師さんはまずここを刺したがる。しかし、おいらの場合この付近の血管が細く採血がうまく取れることが少ない。たまに果敢に挑戦する看護師さんがいるが、大概失敗し血管を探してグリグリやられる羽目になる。上腕の中間に位置する辺りは血管が太くよく見えるので、点滴のルートを入れるのに最もよく使われる。痛みはそこそこあるがまあさほど苦しくなく我慢できる。

第5位 首

 滅多に刺す機会がないのであまり記憶がないが、肉がやわらかいためイメージするより痛くはない。ただ部位が部位だけに怖い。

第4位 手

 いよいよ苦行のレベルに入ってきた。手周りは肉が少なく骨に近いためどこもかなり痛い。だが意外にも、親指の付け根がかなり痛い。そこは比較的肉がたくさんあってたいして痛そうに見えないが、ズギーン鈍く重い痛みが走る。

第3位 足

 ここも手同様、肉が少なくかなり痛い。滅多に刺す機会はないが、血管が太いためたまにCT検査などで大量に造影剤を流し込む時などに使ったりした。

第2位 肋骨の近く

 肺の周囲に水が溜まった時に、一度刺した。麻酔をしたので痛みはそれほどではなかったが、それでも内部の肋骨近くを刺すときは流石にかなり鋭い痛みだった。医者曰く、骨の近くは特に痛いらしく、入念に麻酔が施された。

第1位 すね

 長期に入院していると、腕の血管のほとんどが採血や点滴の刺しすぎで使えなくなってくる。そうすると、足の血管を使うようになり、足の中でも特にすねの表面の血管を刺すのは痛い。肉がないので、刺すというより、ナイフで切られているような鋭い痛みが走る。

拷問級 鼠蹊部

 カテーテルをするときに使う。これまで何度も刺されてきたが、毎回悲鳴を上げるほど痛い。歯を食いしばり、ギー、ヒー、ウー、などと呻いてしまい、一度は過呼吸になるほど苦しかった経験がある。だからカテーテルはいつもものすごい憂鬱で仕方がない。

 

 全体に共通して言えることは、肉が少なく骨に近い部位ほど痛い。しかしこうした痛みの強さは絶対的なものではなく、その程度はかなり心理的な部分に左右される。怖い、痛い、と想像するほど痛みは増すのだ。だから、先天性心疾患者は、恐怖に打ち勝たなければマスターになれない。恐怖は暗黒面に通じているのだ。