ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

断捨離は心臓に悪い

南の島へ向けた引越準備を進めている。できるだけ荷物を減らそうと、思い切って本や過去の資料などを処分することにした。紙の資料はできるかぎりスキャナーで取り込んで電子化し、実物は廃棄した。おいらは、4年前からの第2の闘病時代からの血液検査の結果を全部とっておいた。300枚以上にもなったが、それらも全て電子化した。

 4年前の最初に受診したときと、もっとも最近の検査結果を比較すると、おおむねよくなっていてうれしい。たとえば血中蛋白量(TP)は4.1→6.6、アルブミンは2.4→4.1、IgGは466→753と蛋白関係は軒並改善している。4年前はとても低くここから蛋白漏出性胃腸症が判明した。肝臓系もGOTが31→22、GPTが28→11、γGTPが81→51と改善した。4年間の中で最もひどいときにはγGTPが1084になったこともあった。少し悪くなっているのもあり、たとえばヘモグロビンは17.9→13.1、アミラーゼは72→150、クレアチニンは0.78→0.89とそれぞれ悪化しており、まだ昨年の地獄入院の影響を引きずっている。

 こんな感じで、4年間で受けたのべ200回以上の血液検査の記録が全てある。生物学者としては、いつかそれらのデータを分析して、各検査項目の間の関連性を調べて、蛋白漏出性胃腸症が再発する兆候がどの項目から読み取れるかを明らかにしたいと思っている。そして、その分析結果をいつか論文にまとめて、医学雑誌に投稿するのだ。おそらく、医者でもない患者自身が自らの検査結果をもとに論文を書いて投稿するなんて、ほぼ前例がないだろう。もしそんな論文が書けたら、自分の専門の植物の研究論文よりわくわくしちゃうな。

 紙の資料はいくらでも電子化して保存できるけれど、電子化できないものも沢山ある。そして、電子化できないものほど大切だったりする。友人、知人、家族との思い出が詰まったものも、たくさん処分した。それはじわじわとこたえてくるものだった。そのためなのか、昨晩は夜中に胸が痛くて目が覚めた。起きてネットで症状を調べてみると、異型狭心症というものに症状が似ていた。明け方など安静にしているときに起こる胸痛で、精神的ストレスが原因になったりするらしい。おいらの心臓くんは捨てないでと叫んでいるのだろうか。ごめんよ。でも頭にはしっかり記録したからね。