ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

青の世界

南の島だというのに、ここ数日意外と寒い。最高気温は20度にならない日が続いている。寒くなると途端においらの体調は悪くなる。寒気がしてだるく、少し頭痛や気持ち悪さがあり、胃腸も不快感が出てくる。体は重く、何もするにも息苦しい。温かい紅茶などを飲んだりしてなんとか午前中をやり過ごすと、やっと体調が落ち着いてくる。

 その割には、ビーチに連日のように行った。南の島の海はこの世のものと思えないほど青く美しい。絵に描いたようなコバルトブルーであった。その海の中を、さらに青い魚がチラチラと泳いでいるのも見えた。また、陸では藍色イソヒヨドリがすぐそばまで近づいてきて美しい声で鳴いていた。その青は、胸の橙色とのコントラストでより一層際立っていた。また、近所にある城跡に行ったときには、アオスジアゲハが乱舞していた。イソヒヨドリの深い青と違って、透き通るような水色の青がキラキラと光っていた。島の野菜も強い日差しを浴びるせいか、青々としていた。オカワカメや青パパイヤなどこれまでほとんど食べたことがない食材はもちろん、クレソンやレタスなど内地でもよく食べる食材も青が濃かった。

 新しい職場となった大学には敷地内に大きな池がある。早速出勤初日に池を見学してみると、鮮やかな青がパッと光って飛んで行った。池に住むカワセミだった。カワセミは妻と子供が以前からずっと見たかった鳥で、おいらも過去に一度しか見たことがなかった。残念ながら今回もおいら一人だったので、今度は家族で見に来よう。

 南の島は、見るもの見るものが青いものばかりの世界だった。そんな中、おいらの顔は寒さで青ざめていた。まあそれも青の世界にはお似合いかもしれないね。