ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

安物買いの命失い

来週、九州へ旅行に行く予定を立てている。南の島に移り住んで以来、初めて島の外に出る旅になる。飛行機は、しばらく前に障害者との間でトラブルがあったLCCを使う予定である。正直、LCCは狭かったり、ターミナルも遠かったりと疲れが大きいので、できれば避けたいのだが、他の航空会社は倍以上の値段でとても手が出なかった。  

 先日のトラブル事件では、改めて障害者差別の問題が浮き彫りになった。特に世間の意見で多かったのが、LCCは障害者を支援するサービスを含めてコストカットしているのだからその支援を求めるのが筋違いだ、という意見であった。しかし、障害者を支援することは、他のサービスと同列に捉えてはいけないように思う。飲み物を提供するのとは、わけが違うのだ。例えば、飲み物を提供しないといった不便さは、障害者か健常者に関係なく同等にかかってくる。しかし、階段を使うことは、健常者にはあまり不便に感じないが、一部の障害者には絶望的に不便になる。それは、障害者だけが不利益を被る差別的なものである。もし、こうした世間の意見が正当なものと認められてしまうと、別にLCCではなくても、町にあるレストランなどでもコスト削減を大義名分にして、いくらでも障害者を断れてしまうだろう。障害者への配慮をコストと考えること自体が差別的なのである。  

 そんな文句を垂れながらも、結局おいらはLCCに乗ろうとしている。でも、旅を元気に楽しむには本当は値段がかかっても、より快適な他の航空会社を利用したほうがいいと思う。LCCを使って旅行に行くのは、健康な人でもかなり疲れることだろう。そんな無謀な旅を計画してしまったためなのか、おいらたちに旅へ行くなと言わんばかりに、巨大な台風が忍び寄ってきている。もし運よく台風が外れて、旅行に行けたとしても、機内で具合が悪くなってせっかくの旅が台無しになる違いない。最悪不整脈が発生して、急性心不全でお陀仏なんて事もあるかもしれないな。