ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

心臓は嘘をつかない

以前、おいらの心臓は、身に迫る危機を頭で考えている以上に正確に感じ取ることができる、と書いた。例えば、頭ではまだ大丈夫かなと思っている時でも、心臓の方が先にドキドキと動悸がして危機を感じ始めるのだ。ここ数日、狭心症のような症状が頻発している。左側の腕や胸、背中、首が重く鈍く痛むのだ。また、心臓の鼓動がとても強く高鳴る時がある。これらの症状は、狭心症の関連痛あるいは放散痛と呼ばれる症状によく似ている。おいらの心臓は、今何かに強い危機を感じているようだ。

 その原因はおそらく、ここ数日畳み掛けるように明らかになっていく政治に関する疑惑であろう。疑惑が解明されていくにつれ、この問題はあまりに衝撃的でこの国の運命を大きく左右する事件であることがわかってきた。それだけに、もし詰めが甘くて真相の解明が不十分であったり、責任の所在が曖昧のままに終わってしまえば、この国は偽りに満ちた世界になってしまうことは間違いない。今まさに国の未来をかけた究極的な状況にいるのだ。おいらの心臓の高鳴りは、その怖ろしい状況を極めて敏感に感じているようだ。

 心臓が高鳴り、苦しんでいるのはきっとおいらだけではない。他にも不安や恐怖や期待など様々な感情で心臓が高鳴っている人は多いだろう。何より今回の事件に関与した人物こそ、今心臓がとても苦しんでいるはずだ。そんな心臓が痛むような良心は持ち合わせていない、と思うかもしれない。でも、おいらは全ての心臓を信じている。心臓は正直だ。いかなる人の心臓であっても、頭とは裏腹に敏感に危機を感じ取るはずだ。そんな正直者の心臓くんが苦しんではなんだかかわいそうだ。だから全ての人の心臓が安らげるよう、どうか全真相がつまびらかに解明されることを切に願う。