ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

親不孝な帰省

40才台になると、知人や友人に親が亡くなられる方が多くなってくる。それは悲しいことではあるが、親を見送れるのはある意味最高の親孝行なのではないかと最近思うようになった。すでになんども書いているように、おいら自身は50歳くらいが寿命だろうと予想している。幸いおいらの両親はまだ健在なため、きっと自分の方が親より先に逝く可能性が高い。しかし、おいら自身が自分の子供を持った今、子供が先に亡くなるのは親にとってすごく辛いことだと想像できるようになった。

 3年ほど前の地獄入院で死にかけた時は、親や家族にかなりショックを与えてしまったようだった。それ以来、親は精神的にも肉体的にも弱っていっているように感じる。今までは親の死に目を想像できなかったが、最近は少しずつ現実味を感じるようになってきた。そんなことを考えたら、年末くらい親に会いに行こうかなという気になり、明日から南の島を離れ帰省することにした。

 妻と息子は、この冬もスキー留学のため南の島を離れる。すでに数日前に島を飛び立って、留学先である山岳地域に移動していた。明日から親の住むところに皆合流して年末年始を過ごす。南の島に比べると、親の住む地域は30度近くも気温が低いので、寒さがとても不安である。そのため、冬山登山をするぐらいに防寒ウェアをリュックに詰め込んだが、恐ろしい重さになってしまった。一人で重い荷物を背負って飛行機、電車、バスを乗り継いで長旅をするのは、かなり辛い。寒さと重さと旅の疲れで、親を気遣うどころかおいらが看病される羽目になりかねない。

 しかし、そんな試練をかいくぐるからこそ、久しぶりに親や家族と再会できることが格別楽しみに思えてくる。なんてのは建前。本当の楽しみは、帰省先でのグルメや温泉を堪能することだよん。もう防寒ウェア以上に入念に調べて、行きたいお店をリストアップしたからね。さらに道中も口寂しくならないよう旅のお供のおやつも買い込んで、ますますリュックが重くなったよ。だから防寒ウェアを一つ抜いちゃったよ。