ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

覚悟の時代

年度の始めは、新しい職場や学校に通い始めたり、初めての地域に住み始めたりと、多くの人にとって不安と期待の時期である。特に今年は新元号が発表されたこともあってか、一段とまばゆい雰囲気に包まれている。おいらもまた、今年は例年になくなんだか明るい未来を期待してしまっている。

 明るい未来を期待する理由は、ないわけではない。ここ数年を思い返すと、おいらは第2の闘病時代に入った2013年以降、毎年3月から4月は入院しているか、入院開けすぐの衰弱した状態だった。2013年と2014年は蛋白漏出性胃腸症(PLE)で入院、2015年は不整脈でアブレーションと電気ショック入院、2016年はPLEと腰椎骨折の地獄入院、2018年は心筋梗塞で入院だった。比較的安定していたのは2017年で、おかげで南の島に移り住むことができた。しかしそれでも、体力はまだまだ弱く、ちょっとしたことで疲れたりむくんだりと安定はしていなかった。

 そして今年は、体調が極めて安定した状態で新年度を迎えられた。先日一瞬不整脈に見舞われたが、それもすぐに回復した。体調が安定していると、気持ちにもゆとりが出てくる。ここ最近、不思議と誰に対しても臆することなく接することができるようになった。こんなことは今まで全くなかった。これまでは内心いつもビクビクしていたり、恥ずかしかったり、遠慮していた。しかし、今は初対面の人ですら楽しく会話することができた。そんな自分の様子に、おいら自身がとても驚いている。

 いつ悪化するかわからない体調に怯えているときは、自分の生き方を制限してしまう。人との交流は体力的にも精神的にも厳しいので、極力控えていた。しかし、これからはそんな制限をしなくても良いかもしれない。一方、それは試練でもある。おいらは、病気の制限を理由に甘えてもきた。面倒な交流を避け、家族や昔馴染みの友人など気楽な関係だけに甘んじていた。新たな人々と真摯に交流をしようとするならば、そんな甘えはもうできない。それは新時代に向けた、おいらの覚悟でもあり期待でもある。