ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

アリズミアは有りえんリズム

先日、再び不整脈が起きた。昨年10月と今年の3月は心房粗動だったが、今回はそれらとは様子が違った。脈は早くなかった。毎分70〜80拍ほどだった。しかし、胸が苦しく、体がだるく力が入らない。軽い吐き気もして食欲もなくなった。症状は夕方くらいから顕著になり、一晩寝れば落ち着くかと思ったが朝になっても変わらなかった。それでも、朝食を食べお弁当を持って職場に通勤した。

 おいらの職場は、とてもありがたいことにおいらが休めるようにとソファーを用意してくれている。少し疲れたり調子が良くないときはソファーに持たれかけて休むことができた。しかし、その日はソファーで休んでも一向に良くならず、仕事などとてもできる状態ではなくなった。喉もやたらと乾いた。温かいお茶を飲んで少し安らいだものの、誰の目から見ても顔色が悪く、普段の調子悪いおいらと比べてもさらに悪そうだった。

 それでもおいらは不整脈なのかどうか確信が持てず、病院に行くのをためらってしまっていた。それは、病院に行けば1日がかりの治療になり、家族に負担をかけてしまうのが申し訳なかったからだ。それに、何度も電気ショックを受けるのが不安でもあった。過去の経験では、何度もやりすぎて電気ショックが効かなくなり、受けた翌日に不整脈が再発するようになったため、再びそうなりそうで怖かった。ようやく覚悟を決めて病院に電話すると、案の定すぐに来るようにと主治医から指示を受けた。妻に送ってもらい、救急外来で診察と検査を始めると、やはり不整脈なので電気ショックをすることになった。

 電気ショックを受けるまでの待ち時間、心電図モニターをつけてベッドで寝ていた。その場に及んでも嫌だなと憂鬱な気分だった。その時、モニターから今まで聞いたことのない心拍のリズムが聞こえてきた。楽器を習いたての初心者でも、いやむしろ一流のプロミュージシャンでも出せない不規則なビートだった。おいらはさっきまでの不安も気分の悪さも吹っ飛び、あまりの面白さに携帯電話でその音を録音しまくった。他の雑音が入ってなかなかきれいに録音できなかったが、比較的きれいに録れた一つを記念にアップしておこう。

 おいらは以前から複雑なポリリズムの音楽を聴くのが好きなのだが、自分の内なる部分にこんな未知のリズムが隠れていたとは、とても感動的な発見だった。そんなおいらの気持ちに応えるかのように、心臓くんはますますバキバキに乱れてくれていた。