ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

最強アイテム

映画やアニメのスーパーヒーローたちには、必ずと言っていいほど自己の能力を何倍にもパワーアップさせ、時に無敵状態にすらしてしまう最強アイテムが存在する。絶体絶命のピンチが訪れた時には、都合よくそのアイテムが降ってきて、それを使えば、どんなに強い敵も一撃で倒したり、傷ついた身体が途端に治癒したり、脱出不可能な状況から抜け出せたりする。しかし、現実の世界ではそんな最強アイテムはどこにも存在しない。せいぜい男の子たちが、アイテムを形どった玩具を手にして、気持ちだけはパワーアップしたかのように振る舞うだけだ。そんな男の子たちに仲間入りして、先日おいらも最強アイテムと言っても過言ではない物を手に入れた。それは、特に変わったものではなくごくありふれたステンレス保冷ボトルである。しかし、そいつは実際においらのQOLを劇的に高めてくれたのだった。

 なぜステンレスボトルが最強アイテムなのか。以前このブログで、おいらの至福のひとときとして深夜目が覚めた時に、冷たい水を飲むことをお話しした。それは、厳しい水分制限がかかった入院の時から身についた習慣のようなもので、一日の終わりの深夜にその日に飲める水分量を使い切るため、心置きなく水を飲めたことが忘れられない幸せだったからだ。水分制限がなくなった今でもその習慣が残り、夜中に水分を飲んで一日の終わりの幸せを味わっていた。

 ステンレスボトルを獲得したことで、その幸せがより身近により強化されたのだ。毎晩寝る前に、ボトルに水と氷を入れ枕元に置いておけば、夜いつでも好きな時に冷たい水を味わうことができる。しかも、その冷たさは冷蔵庫でただ冷やした水よりもはるかに冷たい。まるで氷をなめているような心地なのだ。その心地よさは、フォンタン再手術直後の最強レベルに水分制限(一日50cc)がかかっていた時に、唯一ひとかけの氷を舐めることができた時を思い起こさせてくれる。それは極限の苦しみと痛みをほんの一瞬だけ和らげてくれる、まさに絶体絶命の生命の危機を救う瞬間であった。ステンレスボトルは、その瞬間をいつでも手軽に味わうことを可能にしたのだ。

 ステンレスボトルが最強アイテムなのは、それだけではない。これまでおいらは外出時に水分を持ち歩く際、ペットボトル飲料を購入していた。しかし、ペットボトル飲料は購入直後は冷たいが、すぐにぬるくなってきてしまう。そのため、冷たくて美味しい時についついたくさん飲み過ぎてしまい、あとで足りなくなってしまう事態が度々起きた。ステンレスボトルによりその悩みは解消され、長時間冷たい飲み物を持ち歩くことができるようになったのだ。さらに、好みのフレーバーの水出し茶葉を一緒に入れておけば(例えば白桃烏龍茶とかマスカットグリーンティとか女子力高いやつ)、市販のペットボトル飲料よりはるかに美味しい飲み物を持ち歩けるようになった。しかもペットボトルを買うよりも安く済む。冷たい、美味い、安いと良いことづくめなのである。これを最強アイテムと言わずなんと言おうか。

 そんなわけで、ステンレスボトルを得てからは、出かける時も睡眠する時も女子力アップして、なんだかルンルンになってしまう40過ぎの気持ち悪いおっさんであった。