ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

君の未来

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君は何を感じているの。
力が入ってじっと動かない体は、
硬直したようでもあり、何かを全身で感じているようだ。
君が感じているのは生き物の命かな。
シロツメクサの匂いややわらかな草の手触りは、君の心を刺激しているね。
それは生涯君を虜にするよ。
命の謎が解けて感動する時だってある。
どれもこれも面白いよね。不思議だよね。

 

君は何を考えているの。
そっと握りしめた拳は、
弱々しくもあり、何かを表しているようだ。
君が考えているのは心臓のことかな。
君の心臓は他の人とは違う形や動きをしているね。
耳を当てれば変な音もするよ。どっきんと強く打つ時だってある。
どこでもいつも早いよね。変だよね。

 

君は何を見つめているの。
口をきつく結んで遠くを見つめる表情は、
不安そうでもあり、何かを覚悟しているようだ。
君が見ているのは未来のことかな。
これから君は辛いこと痛いことをたくさん経験しないといけないね。
手術や入院を何度もするよ。飲んだり食べたりできない時だってある。
どれもこれも怖いよね。嫌だよね。

 

でも大丈夫。君は全部乗り越えられるよ。
君の未来は辛いことばかりじゃない。
君は命の本質に触れられるよ。君は心臓と会話ができるよ。
君は辛い体験も笑って話せるよ。

 

そんな未来の話より、今本当に君が感じて考えて見つめているものは、
食べ物のことだよね。君は食いしん坊だからね。
お母さんが持っているおやつを早く食べたいよね。