ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

頑張ることの断捨離

気づけば丸々1ヶ月このブログを更新できずにいた。理由はいくつかある。一番大きな理由は、ゴールデンウィーク前にうっ血性心不全を発症してしまい、GWは入院しその後も息苦しい日々が続いたためだ。入院前と入院中は、実に息苦しかった。特に夜中から午前中にかけてがひどく、夜は何度も溺れたような感覚がして目が覚めた。目が覚めた後は体を起こして深呼吸を続けたが息苦しさは治らなかった。そんなわけで、夜中は息苦しさで目を覚ますことを何度も繰り返し、まともに睡眠が取れない日々が続いた。睡眠不足が何日も続くと、常に頭がボーっとしてフラフラし、すごく眠くてあくびも出るのだが、なぜか眠すぎて眠れないという恐ろしい状態になった。

 うっ血性心不全になると、肺に水が溜まってしまい呼吸困難になる。GWに入院した時は、ともかく溜まった水を抜くために、連日一日2回利尿剤(フロセミド)を点滴から投与された。毎日2500mlほどの尿が出たおかげで、少しずつ息苦しさが和らいである程度眠れるようになってきた。そのため入院期間は5日間で済んだが、退院後も体のだるさや息苦しさは残った。だから退院したとはいえ、少し起き上がって動くだけで、すぐに疲れて苦しくなってしまい、ほぼ一日中横になって過ごしていた。

 今までのおいらだったら、この程度の短期間の入院や苦しさはなんて事なく耐えられていただろう。しかし、今回は精神的にもかなり衰弱してしまった。それは今年1月に死ぬ苦しみを味わった心室細動の入院に受けた精神的ダメージをひきづっていたこともある。起きていても寝ていても何をするにも息苦しく気力が湧かず、体がだるいのがとても辛かった。なんでこんな辛い思いをして生きているのだろう。なぜ生きるだけでこんなに頑張らないといけないのだ。苦しみに耐え頑張って生き続けるのに疲れてしまっていた。もはや涙すら流れないほど逃げ場のない追い詰められた気持ちになり、すがる思いで姉にメールを送った。

 

GWに心不全で入院してた

その頃から精神も弱ってしまったみたい

一日中だるくて気力がわかない

すごく眠いのに眠れない

気を失いそうな感覚

頑張って生きているのが辛い

だれかにもう頑張らなくていいといってほしい

でも生きている以上頑張らないといけない

寝るのも頑張る

起きるのも頑張る

食べたいもの飲みたいものも我慢して頑張る

出かけるのも我慢して頑張る

仕事も頑張る

明日も頑張る

頑張るだらけ

頑張らずにやれるものが何もない

 

しばらくして姉から返事が来た。

辛いね

ひとつづつ減らしていったら?

頑張りたいと思うものは残す

食べることなのか

仕事なのか

 

 姉からのメールにはこの後にもさらに愛情こもった言葉が続いていたが、おいらにはこの最初の5行が一番心に響き救われる思いだった。そう、減らしていけばいいのだ。おいらは頑張ることが辛いと思いながら、頑張ろうとし続けていたのだ。全てを頑張る必要はない。全てをうまくやらなくて良い。そう思えたら、すっと気持ちが楽になった。あとは頑張ることを断捨離していくだけだ。

 早速おいらは断捨離を実行した。今年1月から始めたツイッターをやめ、依頼されていた論文査読を断り、仕事もネット会議など疲れることは全て断った。なんならいつ仕事やめてもいいやと思うことにした。このブログも、間が空いてもいいし、内容がうまくまとまってなくてもいい。もう他人の評価も期待も気にしないのだ。そうして頑張らなくていいものを削っていけば、自分が最も大切に想うことが最後に残るはずだ。

 それが何かはまだ到達できていない。だから今も断捨離が続いている。でも一つずつ減らしていくと、息苦しさも少しずつ和らいでいく気がした。あ、でも勢い余って10万円の給付金申請書類は捨ててしまわないようにしよう。