ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

2021-01-01から1年間の記事一覧

縦隔炎入院②:フォンタン循環で静脈経由ペースメーカー設置は可能か

長い間保留にしていた2度目の縦隔炎入院についてお話したい。 入院は5月下旬から始まった。入院当初の計画から手術は最低3回を予定した。今回クリアしなければいけない課題は、①縦隔炎の感染部分を除去して徹底的に洗浄し、できるだけ菌の総量を減らすこと…

一つの物語が終わり、一つの物語を書く

前回の記事から、3ヶ月が過ぎた。その間何をしていたかと言うと、前回の記事の最後に書いたように縦隔炎が再燃したため、5月下旬から7月中まで2ヶ月弱入院していた。入院中や退院後は、記事を書く時間はたくさんあったが、精神的・肉体的ゆとりがなく書…

再び目覚めた小さな怪物:縦隔炎入院①-抗生剤治療編

前回の記事から、一ヶ月以上記事を書かずに過ぎてしまった。この間、4週間弱入院していた。今回の記事は、その4週間弱の入院について記録したい。記事が書けずにいたのは、入院中であったからともいえるが、実際入院中は書く時間がたっぷりあった。しかし…

エバーちゃん

おいらの祖母が亡くなったのは、20年以上も前のことだ。おいらは、祖母が大好きだった。母方の祖母は、母が小さい時に亡くなっているから、ここでいう祖母とは父方の祖母のことである。 おいらは、常に死を身近に感じながら生きているようなところがあるので…

読まれる学術書の書き方

昨年末行ったシンポジウムの講演の話を本にまとめるために、原稿を書いている。締め切りは8月末でまだしばらく先ではある。しかし、早くも書き終わるか不安で、常にそのことが頭の片隅にこびりついてしまっている。平日は仕事と家事で疲れてしまうため、書…

東京都心で体験した震災:後編

前編のおさらい。東京駅で地震にあったおいらは、その後隣の駅にいた妻と子供と無事合流し、10kmほど離れた実家を目指して歩き始めたのだった。 震災が起きた頃のおいらは、今のように心臓の調子が悪くなっておらず、人生の中で一番体力がある時だった。おか…

都心で見た震災:前編

まもなく東日本大震災から10年になる。テレビでも連日特集番組が放送されており、もうすでに多くの人々によって語り尽くされた体験談ではあるが、おいらもあの日の体験を記しておきたい。 おいらは2011年3月11日のあの時間、東京駅にいた。北海道で開かれた…

COVID-19と先天性心疾患:9人の子供の症例

今回は久しぶりに論文紹介をしたい。しかし、以下に紹介する論文は先天性心疾患の子供を持つ親御さんにとっては、不安が増すだけであまり知りたくない情報かもしれない。でもおいら個人の考えとして、たとえネガティブな情報であっても、それを知ることによ…

狭まる美味

新型コロナに感染すると、味覚障害や嗅覚障害が生じて味や匂いが分からなくなる場合があると言われる。幸いおいらは、これまでの人生で味や匂いがわからなくなるような症状は経験した記憶がないが、味や匂いの感じ方(好き嫌い)が体調によって変わった経験…

負を感じる感覚

今日は少し短めの話をしよう。 おいらは、楽しく明るく幸せな日常を望んでいる一方で、どこかその反対の悲しく暗く辛い状況を求めてしまう気持ちが心の奥底にある。全てが順調で何の不安も不満もなく、周囲の人々と皆仲良く、トラブルも抱えてなく、もちろん…

バナナ以上に素直な生き方

『こんな夜更けにバナナかよ』は、筋ジストロフィーを抱える鹿野靖明氏の生活を取材したノンフィクション作品の本である。ボランティアとの交流や自立生活の実態が詳細に描かれた作品として評価され、映画化もされたのでご存知の方も多いだろう。おいらも何…

映えはつらいよ

今日は前回の記事の後日談をグルメ旅ブログ風にお伝えしたい。 前回、数年間使っていなかったミニベロ自転車を蘇らせるため、”次天気の良い休日が来たら、南の島らしい海岸線沿いの道をサイクリングするつもりである。”と書いた。 残念ながらこの3連休はず…

増え続ける喪失感

年々心臓が弱り体力が落ちていくとともに、使われなくなってしまったものがいくつもある。それらは家の片隅にあちこちに置かれており、一日の生活の中で何度も視界に入ってくる。普段はそれでも特に気にならないが、ふとしたときにそれがよく使われていた頃…