ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

フォンタン術後の単心室小児患者におけるCOVID-19の症例

新型コロナ感染症が世界中に拡大し半年以上が経過した。当初から、心疾患を持つ患者はコロナ感染症による重症化や死亡リスクが高いと言われてきたが、特に先天性心疾患の患者についてはどのくらいそのリスクが高いのかは全くわかっていなかった。感染拡大か…

フォンタン料理の極意

随分と大胆なタイトルだが、今日は最近2週間においらが料理して食べたものを紹介しながら、フォンタン患者の食事事情についてお話ししたい。 まず前提として、先天性心疾患を持つ人のほとんどは、程度に差はあれど食事に何らかの制限が掛かっている。塩分と…

これだけはお前らに約束する。

先日、何年かぶりに旧友二人からメールをいただいた。それぞれの近況を話してくれて、おいらも自分の近況を話し、久しぶりの会話にとても嬉しかった。その二人のメールとは別においらに朗報のメールが届いた。投稿していた論文が雑誌に掲載される見込みとな…

なおざりな差別

先日、首相が辞任を表明した。持病が悪化し職務を全うできないというのが主な理由だった。これに対してある野党の議員が「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」という明らかな差別的発言をして、強い批判にさらされている。おいらも障害を持…

痛みの緩和術

今回は、おいらはこれまでの闘病経験で、痛み、苦しみ、辛さからなんとか逃れようとした時に実践したことを紹介したい。これはある程度病気で痛い思いや辛い思いをされた方であれば、おそらく誰しもが似た経験をされていると思うので特に目新しいことではな…

小児が性に合う:心外導管穿刺法アブレーション入院後編

アブレーション入院の続きを書こう。アブレーションの翌日、朝9時に主治医の先生が来て、すぐに脚の付け根に何重にも貼ったテープを剥がしてくれた。テープを剥がす時は予想通りかなり痛かったが、途中から自分でやらせてもらえたため比較的楽にはがせた。テ…

二箇所から吹き出す血の池地獄:心外導管穿刺法アブレーション入院前編

アブレーション入院から退院した。日曜日から日曜日までの丸一週間の入院だった。それぞれの日に起こったことを記録のために記し、最後に感想的なものを書いておく。 入院初日。担当医は現在の小児循環の主治医と、もう一人やはり小児循環の若い先生だった。…

アブレーションであぶねえ小便

明日からカテーテルアブレーションを受けるため入院する。期間はわからないが、問題が起きなければ1週間くらいであろう。以前にも書いたように、過去に受けたアブレーションでは長時間の激痛を伴ったため、今回もそうならないかという不安で頭が一杯になる程…

男はつらいよーポテトサラダ記念日

7月に入り、気持ちが落ち込んでいる。以前のように日々の暮らしの中に喜びをあまり感じることができず、毎日時間が過ぎるのを待つように過ごしてしまっている。もしかしたら鬱なのだろうかと、ネット上のうつ診断チェックを片っ端からやってみると、予想通り…

穿刺で戦死

今年の上半期は、ここ3年ほどの中でも特に心臓の調子が悪い半年となってしまった。1月にはカテーテル検査中に心室細動を起こし、死ぬかと思うほどの苦しみを味わった。その後も心房細動や心房粗動が月に2、3回おき、その度に電気ショックを受けた。さらにペ…

どんな抗生物質や修行も効かないことがある

数週間前から虫歯の治療を始めた。正確には、初診は歯や歯茎の状態のチェックで、2回目、3回目は歯石や沈着汚れを掃除をしてもらい、治療が始まったのは4回目だった。先天性心疾患業界ではもやは常識となっているが(そもそもそんな業界があるかは置いておい…

父の休日

世間では今日は父の日で、家でご馳走を食べたり、家族からプレゼントや感謝の言葉をもらったり、といったお父さん方もいたかもしれない。しかし、おいらには全く無縁のごく普通の休日だった。父の日を意識したわけではないが、朝息子に今日はどこか出かけよ…

20gに託された命

ペースメーカー(PM)が突然止まったら、おいらは一体どうなるのか。それは、5年前にPMを埋め込んだ時から、怖いもの見たさのような好奇心として、おいらの頭の片隅にずっと潜んでいた。図らずもその好奇心は満たされることになった。この1ヶ月半ほど、おいら…

身体の幸せと心の幸せには50°Cの差がある。

おいらの住む南の島は梅雨の中休みに入り、この数日は日中30°C前後になるようになった。30°Cとなれば、一般的には汗ばんで暑さが鬱陶しい陽気だが、おいらにとってはすこぶる心地よい。もちろん、おいらにとっても30°Cは暑い。でも、寒さで体調を崩す心配が…

頑張ることの断捨離

気づけば丸々1ヶ月このブログを更新できずにいた。理由はいくつかある。一番大きな理由は、ゴールデンウィーク前にうっ血性心不全を発症してしまい、GWは入院しその後も息苦しい日々が続いたためだ。入院前と入院中は、実に息苦しかった。特に夜中から午前中…

VAC to the future

少し古い話だが5年前のTCPCフォンタン転換手術の時について、再び思い出話をしたい。 これまでに術前から一般病棟までの過程は以下の記事でお話しした。 入院前:避けられない手術 入院後手術まで:人工心肺、結構心配 手術の状況:血の海を渡ると地獄 手術…

マイペースな愛情

この時期にこんなのんきな話をしても99%の人が興味を引かないだろう。だからこそ、時代に流されないマイペースな話をしてみたいのだ。そう、おいらのもう一人の心の師匠で、ある意味マイペースを貫いた人物チャーリー・ヘイデンの話である。 ヘイデンってど…

心の師

おいらには、心の師と仰ぐ人物が二人いる。偶然にも二人ともチャーリーという名の外国人だ。今回はその二人の師匠についてお話ししたい。 一人は、かの有名な喜劇王チャーリー・チャップリン。彼の存在を知ったのは、おいらが保育園の年長の頃だった。その頃…

死までの近さ

志村けんのコロナウイルス肺炎による急死によって、死が他人事ではなく急激に身近に感じた人も多いだろう。自分のよく知っている人、好きな人、身近な人が亡くなってしまうということが現実に起きたのだ。もしかすると、もっと身近な人あるいは自分自身にも…

スーパー患者

世間では、神の手と呼ばれる圧倒的な医療技術を持ち、不可能と思われる手術を次々と成功させていく医者を、スーパードクターと呼んで崇拝している。スーパードクターの元には、世界中から難病を患った多くの患者がすがる思いで訪ねてくる。それだけに手術が…

ファルコンに乗りたい

虚無感に満ちた長い3連休がようやく終わろうとしている。最初にお断りしておくと、以下に書くことは、おいらのしょうもない嘆きや愚痴であり、気持ちの整理ができないまま連休が終わろうとしているため、自分自身の記録のために書いておくことにしたものであ…

クリームシチューの進化学

我が家では、中1の息子の定番料理となったクリームシチュー。前回作ってから約2ヶ月が経ち、再び作ってもらった。息子のクリームシチューが登場するのは、大体おいらの疲れが溜まっていて寒い日である。この数日もその条件に当てはまり、南の島にしては最高…

多様性という試練

人類は、これまで生物が生み出す多様性に散々悩まされてきた。あえて強引に言ってしまうならば、人類史上に起きた様々な問題は、いずれも多様性が発端になっていると言えなくもない。例えば、おいら達が抱えている先天性心疾患という病気。もし、全ての人間…

大規模データの分析でわかった現代の成人先天性心疾患患者の生存の見通しと死因

前回の記事では、先天性心疾患患者へのウイルス感染症の脅威についてはわからないと述べた。しかし、わからないと言ってそのまま調べずにいるのは、3流研究者とはいえ研究者の名が廃るので、この連休を使って文献を調べてみることにした。今日はその成果を紹…

先天性心疾患者にとって新型ウイルスはどれほど脅威なのか

随分と大げさなタイトルだが、結論から言うとわからないというのが今回の話である。現在、世界中で拡散している新型コロナウイルス。ニュースなどで報じられている話では、基礎疾患がある人、心不全がある人などは感染した場合重症化するリスクが高く、特に…

ペースメーカーの夜明け:心室細動入院エピローグ

前編と後編では書けなかった、心室細動に至った原因や心房細動が頻発した原因、そして今後の治療方針について、記録のために書き記しておこう。 医者の説明によると、心室細動が発生した原因として最も考えられるものは、低カリウム血症であった。緊急入院し…

泣く勇気:心室細動入院後編

ICUに移ってから、当初の2日間の滞在という説明とは異なり3日目に突入していた。ICUでの生活は、気が狂いそうなほど口が乾き、鼠蹊部に刺さったシースのためにほとんど身動きが取れず、騒音と光で一睡もできない状況を耐え続けなければいけなかった。あまり…

我を失った心と心臓:心室細動入院前編

先日10日間ほど緊急入院した。それは過去に経験したことがない種類の苦しみを味わい、死を強く意識した入院になった。少し長くなるが、その詳細を記録しておこう。 年明け早々から体調はすぐれなかった。心房細動が発生し病院で電気ショックを受け一度は止め…

息子いれば憂いなし

年明けから息子と二人暮らしをしている。妻は、昨年同様冬の期間は友人の観光業を手伝いに、本土の山間部に長期滞在しに行った。昨年までは息子はスキー留学のため、妻と一緒に行っていた。しかし、息子は中学に入るとスキーへの情熱が冷めてしまい、今年は…

フォンタン循環における肝臓および腎臓の末端器官障害

新年早々、再びフォンタン術後の肝機能障害についての研究を紹介する。この論文では腎機能障害についても詳しく分析している。 ーーーーーーーーーーーーーー Wilson, TG. et al. (2018) Hepatic and renal end-organ damage in the Fontan circulation: A r…