ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

息子いれば憂いなし

年明けから息子と二人暮らしをしている。妻は、昨年同様冬の期間は友人の観光業を手伝いに、本土の山間部に長期滞在しに行った。昨年までは息子はスキー留学のため、妻と一緒に行っていた。しかし、息子は中学に入るとスキーへの情熱が冷めてしまい、今年は…

フォンタン循環における肝臓および腎臓の末端器官障害

新年早々、再びフォンタン術後の肝機能障害についての研究を紹介する。この論文では腎機能障害についても詳しく分析している。 ーーーーーーーーーーーーーー Wilson, TG. et al. (2018) Hepatic and renal end-organ damage in the Fontan circulation: A r…

心臓と脳の心

昨年末は生きがいや希望を見失いかけ、どうしたらよいかわからなくなり、姉や知り合いに相談してみた。姉からは慰められるどころか、「つまらなさを誰かのせいにしているうちは愉しくならない。なにがつまらないか、どうしたら面白いかを考えなさい!」と、…

フォンタン術後のタンパク漏出性胃腸症患者における臨床成果と生存率の改善

今年最後の記事は、少し明るい報告の論文を紹介して終わりたい。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー John, AS. et al. (2014). Clinical outcomes and improved survival in patients with protein-losing enteropathy after the Font…

May the Fontan be with you

クリスマスも終わり、今年もあとわずかとなった。今年は正直暗い年だった。おいら個人的な面では、不整脈がたびたび発生し体調が安定せず、研究職の夢を諦めかけ、科学雑誌に投稿した論文は雑誌編集者から聞いたことがない理不尽な扱いを受け、職場はブラッ…

今後のラインナップ その後

年末になるとその一年を振り返りたくなる。以前、「今後のラインナップ」というタイトルの記事で、今後書きたいテーマやリクエストをいただいたテーマについてまとめた。「今後のラインナップ」は、予想外に反響がありたくさんのコメントをいただくことがで…

ハイゼントラ vs サムスカ

今日は2週に一度のハイゼントラの日。今回もハイゼントラを点滴している1時間の間に、記事を書いてみよう。テーマは、以前書こうとしてやめたハイゼントラとサムスカの対決の話である。まずその二つの薬の特徴を紹介しよう。 ハイゼントラは、患者自身が在宅…

血の証明

最近、暗いネガティブ思考の話が続いてしまっている。そんな話は誰も聞きたくないし、おいら自身ますます気が滅入るばかりだ。それにこのブログの本来の目的は、闘病体験を面白おかしく書くことでもあった。そして病気を持つ生き方も捨てたもんじゃないぜと…

疲れない生き方は、むしろ疲れる。

先天性心疾患の性質上、おいらは物心つく前から無意識のうちに、なるべく疲れないように人付き合いを避けて生きてきたようなところがある。幼い頃は、大勢の友達とわあわあ騒いで遊ぶより、一人か二人の友達とひっそりと遊ぶ方が好きだった。たまに加減を忘…

もしもフォンタン患者が中華料理人になったら

すでに何度もお話ししたが、おいらはフォンタン術後症候群によって、様々な食事制限がかかっている。水分制限や塩分制限は当然ながら、脂肪や辛味も制限が必要である。これらのどれか一つでも怠って制限なく摂取すると、ほぼ確実に浮腫んだり息苦しくなった…

超高価な薬を自己負担なく飲んでいることの説明責任

明日は、2週に一度のハイゼントラ在宅点滴の日。以前のように、点滴を打ちながらライブでブログ記事を書こうと思っていた。前回は、点滴を打っている1時間内に書ききれなかったので、明日の記事はある程度ストーリーも思い描き、記事のタイトルも「ハイゼン…

フォンタン手術後の肝線維症は普遍的かつ、時間経過と共に重症化する。

前回に引き続き、フォンタン患者のうっ血性肝障害に関する論文を紹介したい。非常に衝撃的な内容のため、紹介しておきながら正直読むことをお勧めしない。でも、そのリスクを知ることは、今後の予防法や治療法について考える上でとても重要だとおいらは思う…

君の未来

君は何を感じているの。 力が入ってじっと動かない体は、硬直したようでもあり、何かを全身で感じているようだ。 君が感じているのは生き物の命かな。シロツメクサの匂いややわらかな草の手触りは、君の心を刺激しているね。それは生涯君を虜にするよ。命の…

メスでは泣かないが雌では泣く

子供の頃のおいらは、どんなに痛い思いをしてもほぼ泣くことはなかった。注射をされても、メスで切りつけられても、手術後に体に刺さったドレーンを引き抜かれたり抜糸をされたり手術創を消毒されても、泣かなかった。母親の話では、物心つく前の幼児の頃か…

フォンタンだるまの七転八起人生

このブログでは、おいらの先天性疾患を通じた様々な体験を記してきた。しかし、見ず知らずのおじさんの闘病記なんて、興味もないし退屈だし、とてもじゃないが読む気になれないだろう。そんな方のために、今回はこれまで書いてきた闘病記を極短くまとめたス…

フォンタン循環は、早期に重度の肝臓障害を引き起こす。

今回は、フォンタン循環の深刻な合併症の一つである肝障害について研究した論文を紹介したい。 Agnoletti, G., Ferraro, G., Bordese, R., et al. (2016). Fontan circulation causes early, severe liver damage. Should we offer patients a tailored stra…

生きる姿

先月の台風15号に続いて、再び巨大台風が関東圏に向かっている。特に甚大な被害が出て、今なおその傷が癒えていない千葉県は極めて危険な状況にあり、胸騒ぎがしてしまう。どうか何事もなく無事過ぎてほしい。せめておいらの方に向かってくれないかな。まっ…

静かな時間

入院しているときに、何気に大きなストレスになるのが音である。昼夜を問わず常にどこかで音がなっている。心電図モニターのピコピコ音やアラーム、ナースコールの呼び音、誰かの足跡や話声、いびき、うめき声。気になり始めると、人によっては気が狂いそう…

ラップを貼り付けた白樺のような足

おいらの身体の中で、一番人に見られたくない部分は足のスネである。胸の手術痕は、おいらにとっての勲章であり、できれば見せびらかしたいぐらいだ。身体中に常に無数にある内出血痕は、他人が見ると不気味がられるが、おいら自身は全然気にならない。いわ…

中性存在

今回は、成人男性患者の恥ずかしい悩みについて少し赤裸々にお話ししたい。 入院すると、身の周りの世話を看護師さんにしてもらう機会が多くなる。特に、手術後など寝たきりの状態になっているときは、衣服や下着の着替え、トイレ介助、体拭き、など全てをさ…

Perfume体操

少し時間を遡って、3年前の地獄入院の時の小話をしよう。地獄入院の時のおいらは、腰痛と腰椎圧迫骨折のダブルパンチによって、一時期寝たきりになってしまっていた。日に日に筋力を失い、痩せ細っていく体。当時おいらのリハビリを世話してくれたスパルタの…

ハイゼントラの休日

今日は、2週に一度のハイゼントラ点滴の日。今まさに、お腹に針を刺して始めたところだ。点滴は一回一時間ほどかかる。今回は、その間に一つの記事を書き終えられるか挑戦してみよう。 現在の時刻は3時半。日曜の昼間に点滴だなんて、時間がもったいなく思…

生物にはなぜ病気があるのか

「難病カルテー患者たちのいま」という本を読む。多くの難病患者が紹介されていたが、生まれつき症状が発症している先天性疾患の例は少なく、ある程度成長してから発症する神経・筋肉・骨・消化管・免疫系の難病が大半だった。そうした難病では、早い人なら1…

青い夢

二ヶ月前、地獄を味わった穴場ビーチに再び赴いた。一年中暖かい南の島とはいえ、9月に入ると秋の気配が少しずつ増していっていた。空の色は、まばゆい白から澄んだ青に変わり、雲は高く分厚くそびえ立つ入道雲から薄く柔らかい形に変わっていた。日差しは強…

最強アイテム

映画やアニメのスーパーヒーローたちには、必ずと言っていいほど自己の能力を何倍にもパワーアップさせ、時に無敵状態にすらしてしまう最強アイテムが存在する。絶体絶命のピンチが訪れた時には、都合よくそのアイテムが降ってきて、それを使えば、どんなに…

毛が生えた程度は根本的な違いである話

たまには生物学の小話でもしてみよう。先にお断りしておくと、話が進むほどうざったい独りよがりな展開になって、眠たくなること間違いなし。途中でギブアップして全然OKです。 その生物は、野菜売り場にごく当然のようにありふれて陳列されている。がしかし…

我が子は幸せな人生を送れるだろうか?ーフォンタン循環の子供を持つ親の心配に関する研究

随分と重いタイトルの論文を見つけたので紹介したい。 du Plessis, K., Peters, R., King, I., Robertson, K., Mackley, J., Maree, R., … D’Udekem, Y. (2018). “Will she live a long happy life?” Parents’ concerns for their children with Fontan circ…

箱の底に残った希望

新政党から二人の重度障害者が国会議員に当選し、世間の注目を集めている。国会ではバリアフリー対策が一気に進み、障害者の社会進出に大きな前進が期待できる極めて革新的なことであった。しかし、世間の反応は、パンドラの箱を開けたように、これまでうち…

天国は地獄の入り口

7月に入り心房細動が度々出るようになった。7月後半からは毎日出続けるようになり、電気ショックも効果が期待できなくなった。そこで、投薬の量や種類を変えることになり、まず以前から飲んでいるアンカロン(アミオダロン)の量を増やしてみた。だがあまり効…

フォンタンの未来

先日、フォンタン患者とその家族それに全国から集まった小児循環器医が参加したフォンタンのセミナーがあり、おいらは患者の一人として体験談を語ることになった。おいらは、今住んでいる南の島の中ではフォンタン患者として最高齢らしいが、それは別に偉い…