ある生物学者の不可思議な心臓

ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命について考える。

障害者

これだけはお前らに約束する。

先日、何年かぶりに旧友二人からメールをいただいた。それぞれの近況を話してくれて、おいらも自分の近況を話し、久しぶりの会話にとても嬉しかった。その二人のメールとは別においらに朗報のメールが届いた。投稿していた論文が雑誌に掲載される見込みとな…

なおざりな差別

先日、首相が辞任を表明した。持病が悪化し職務を全うできないというのが主な理由だった。これに対してある野党の議員が「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」という明らかな差別的発言をして、強い批判にさらされている。おいらも障害を持…

May the Fontan be with you

クリスマスも終わり、今年もあとわずかとなった。今年は正直暗い年だった。おいら個人的な面では、不整脈がたびたび発生し体調が安定せず、研究職の夢を諦めかけ、科学雑誌に投稿した論文は雑誌編集者から聞いたことがない理不尽な扱いを受け、職場はブラッ…

箱の底に残った希望

新政党から二人の重度障害者が国会議員に当選し、世間の注目を集めている。国会ではバリアフリー対策が一気に進み、障害者の社会進出に大きな前進が期待できる極めて革新的なことであった。しかし、世間の反応は、パンドラの箱を開けたように、これまでうち…

覚悟の時代

年度の始めは、新しい職場や学校に通い始めたり、初めての地域に住み始めたりと、多くの人にとって不安と期待の時期である。特に今年は新元号が発表されたこともあってか、一段とまばゆい雰囲気に包まれている。おいらもまた、今年は例年になくなんだか明る…

デリケートな多様性

今日書く話は、触れないでおくのが無難な非常にデリケートな話題である。そう、おいらの住んでいる南の島で、今週末、米軍基地建設の是非を問う住民投票が実施される。この島に長年根づく非常に重いテーマであり、おいらだけでなくおいらの周囲の人も皆ナー…

水増し障害者

この夏は水増しだらけの年になった。台風や豪雨で日本中が大雨に見舞われ、浸水したり、河川が溢れたりした。さらに先日には、北海道で大きな地震が起き、広範囲で液状化現象が観察された。いずれの災害でも、多くの方々がなくなる悲惨な被害が出ており、今…

Quantifying QOL

Quality of Life(QOL:生活の質)は、病人や障害者には馴染み深い用語である。しかし意外なことに、調べてみるとはっきりとした定義が見つからないのだ。Wikipediaでは、人生の内容や社会的な生活の質を指し、どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り幸…

常備携帯セット

先日の豪雨では、西日本全域に甚大な被害をもたらした。今尚犠牲者の数が増え続けており、一刻も早い救出と復旧をお祈りしたい。このような大災害に見舞われた時、おいらのような持病を持つ人々にとって最も深刻なのは、薬の確保であろう。仮に水や食料や避…

日常生活活動が極度に制限されている人

引き続きおいらの命綱である社会福祉制度の話をしよう。障害者手帳や障害基礎年金には複数の等級があり、それは障害の程度によって決まる。例えば、障害者手帳の場合は、心機能障害には1、3、4級があり、1級が一番障害の程度が重い。それぞれは、自己身…

4本の命綱

おいらが障害者生活を送る上で、命綱とも言える4つの公的社会福祉制度がある。障害者手帳、障害基礎年金、指定難病医療費助成制度、そして住んでいる市町村による重度障害者医療費助成制度の4つである。幸いなことに、おいらは現在この全ての制度を利用でき…

生きるための装備

年末年始は内地へ帰省した。帰省先は雪が降っており、寒さが耐えられるかとても不安だった。南の島に来る前は、毎年冬の寒さに耐えられず体調を崩して入院していたからだ。せっかく、南の島でこれまで安定してきたのに、帰省して体調を悪くしては元も子もな…

夢の競争

この冬、息子はスキー留学のため前に住んでいた山間部に旅立った。妻も保護者として同伴したため、おいらは一人南の島でお留守番である。本当は一緒についていきたかったが、仕事を休むことになり収入がなくなってしまう上、寒さに耐えきれそうになく、島に…

安物買いの命失い

来週、九州へ旅行に行く予定を立てている。南の島に移り住んで以来、初めて島の外に出る旅になる。飛行機は、しばらく前に障害者との間でトラブルがあったLCCを使う予定である。正直、LCCは狭かったり、ターミナルも遠かったりと疲れが大きいので、できれば…

我が生涯に一片の悔い無し

運命は残酷だ、とはまさにこんなことを言うのだろう。先日、知り合いが突然亡くなられた。その人も心臓ではないが重い病気を持っており、手術を受け、時々発作に見舞われていたという。予兆はなかったが、急に発作が起き亡くなられたとのことだった。まだ若…

艦砲ぬ喰ぇーぬくさー

かつてない猛烈な台風が南の島を上陸しようとしていた。その台風が来ることはだいぶ前からわかっていた。すでに太平洋のあちこちの島で同じ台風に襲われていたからだ。その島に来る直前も小笠原南方の硫黄島でやはり壊滅的被害を受けていた。島の周囲には、…

リゾート気分よりぞーっとする気分

南の島に移住してちょうど1ヶ月が過ぎた。とても長い1ヶ月だった。毎日の仕事に疲れ、早速5月病のような症状になり、しばらく憂鬱な気分で過ごした。ようやく最近慣れてきたところである。妻も慣れない土地で知り合いもおらず、精神的に辛そうだった。子供…

所信表明

今朝、ニュースで優生保護法についてやっていた。現在は廃止されているが、平成8年までは施行されていたそうで、特定の障害を持つ人に対し、本人の承諾なしに不妊手術を受けさせることができる法律だった。先天性心疾患は遺伝性は低いものの、一昔前だったら…

おのおの抜かりなく

おいらの就職活動が終わった。先週受けた遠方での面談で、正式に採用されることになったのだ。4月からフルタイムの研究職に復帰する。ちょうど昨年の今頃、おいらは地獄入院のさなかにあり、生きるか死ぬかをさまよっていたことを思うとまさに奇跡的なことで…

フォンタン術後の長期死亡要因

昨年、フォンタン患者の長期予後に関する論文が新たに発表された。 Tarek Alsaied,Jouke P Bokma,Mark E Engel,Joey M Kuijpers,Samuel P Hanke,Liesl Zuhlke,Bin Zhang,Gruschen R Veldtman. 2017. Factors associated with long-term mortality after Font…

障害は自己PRになるか

ここ最近のおいらの主な活動は、就職活動である。つい先日も、筆記試験と面接を受けてきた。来週もまた、面接を受けに遠方へ赴く。就活では、おいらは病気のことを正直に打ち明けることが多い。応募書類に書いたり、面接のときにも話したりする。しかし、現…

むしろ負はあった方がいい

今、地球上の生物多様性は急速に失われている。生物多様性は、空気や水を浄化したり、食料、衣服、薬など様々な資源を生み出したり、と人類や他の生物に大きな恩恵を与えていると言われる。生物多様性が減少すれば、こうした恩恵を受けられなくなり、さらに…

かわいそうな感情

地獄入院の話はまだまだ続くので、ちょっと箸休めとして別の話題を書くことにする。 先日、NHKのバリバラという番組で、障害者を感動の対象にすることをテーマにしていて、これは同時刻の裏でやっていた日テレの24時間テレビの批判として、かなり評判だっ…

障害者はお荷物か

また日があく。書こうと思うことはいろいろあるけど、一話完結のように話をうまくまとめようとするから、重荷になってしまう。 今日は、あまり触れたくない先月の障害者連続殺人事件について。ほとんどの障害者がこの事件に少なからず、影響を受けただろう。…