ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

今じゃ言えない秘密じゃないけど 出来る事なら言いたくないよ

また一人、有名人が薬物使用で逮捕された。そのニュースを聞いたとき、そっとしまっておきたかった過去の思い出が蘇ってきた。おいらは高校時代、その人物が所属する音楽グループをかなり愛聴していたときがあった。きっかけは、友人たちがCDを貸してくれた…

塵も積もれば山とならず

以前息子がある知能テストの問題を出してきた。どうやら学校で誰かに教わってきたようだ。その問題は、実際に有名企業の入社試験で出たらしい。その問題とは、「鶏を8ドルで仕入れて、一旦9ドルで売り、再び10ドルで買い戻して、11ドルで売った。ではいくら…

Dreams come true

朝の国民的ドラマの中で、「人の夢の話ほどつまらないものはない」というセリフがあった。というわけで、今回はおいらのつまらない夢の話をしよう。 その夢は、いつ見たのかわからない。おそらく子供の頃だろう。もっと言えば、夢なのか現実だったのかもいま…

デリケートな多様性

今日書く話は、触れないでおくのが無難な非常にデリケートな話題である。そう、おいらの住んでいる南の島で、今週末、米軍基地建設の是非を問う住民投票が実施される。この島に長年根づく非常に重いテーマであり、おいらだけでなくおいらの周囲の人も皆ナー…

妖しき統計

おいらが専門にしている生態学は、生物学の中で最も統計を駆使する分野である。生物学には、生理学、発生学、細胞学などほとんど統計を用いない分野もあれば、生態学、系統分類学、遺伝学のように統計を使いまくる分野もある。実際、おいら自身も日々の研究…

2つの記録

今から約3年前半の38歳の時、おいらはTCPC conversion(フォンタン転換手術)を受けた。その時の手術直後の状況を妻が記録してくれていた。このサイトを作ろうと思ったきっかけは、30年前の母の残した記録と3年前の妻の残した記録、その2つの記録があったこと…

インクレディブル・ファミリー

今から約30年前の12歳の時、おいらはAPCフォンタン手術を受けた。その時の入院の状況を両親が記録して1冊のファイルにまとめて残していた。ファイルには記録だけでなく、当時のクラスの同級生からいただいた手紙も保存されていた。どの手紙にも、おいらが手…

まめに生きる

この冬もまた、年末から妻と息子が南の島を離れ、遠く離れた山国へスキーの留学に旅立った。おいらは3ヶ月間一人お留守番である。正直、爆発的に寂しい。年々一人でいることが寂しくなっている。入院をした時には、退屈さとあいまって昼夜を問わず寂しくてた…

命の品定め

最近、おいらの住む南の島のサンゴ礁を巡って、世界中を巻き込んだ論争が起きている。軍事利用のためにサンゴ礁が埋められる事態が迫っており、その保全が争点の一つになっているのだ。おいら自身は、生物学者の端くれとして保全を願っているが、生物保全の…

親不孝な帰省

40才台になると、知人や友人に親が亡くなられる方が多くなってくる。それは悲しいことではあるが、親を見送れるのはある意味最高の親孝行なのではないかと最近思うようになった。すでになんども書いているように、おいら自身は50歳くらいが寿命だろうと予想…

静と動

おいらの心臓は、生まれた時は静脈と動脈が混ざり合っていた。そのため、常に顔色は悪く、唇や爪は紫色、ちょっとした運動でも酸欠状態になり苦しかった。フォンタン手術を受け、その苦しみから解放された。静脈と動脈は混ざり合わなくなり、顔も唇も爪も血…

移行期チェックリスト

先天性心疾患患者が大人になるとき、小児医療から成人医療への移行が必要になってくる。小児医療だけでは、成人特有の成人病などの病気や、フォンタン術後症候群などの後期合併症に必ずしも対応できないからだ。さらに患者自身の意識の移行も重要である。子…

注射が痛い部位ランキング

ここ何回か少し暗い話が続いてしまったので、たまにはくだらない小ネタ話でもしよう。おいらはこれまで身体の様々な部位に注射を刺されてきたが、その中で痛かった部位をランキング形式で発表したい。 第10位 耳たぶ これは誰でも知っている通り、神経がほと…

植物の涙

おいらの住む南の島には、モモタマナという樹木種が島のあちこちに自生し街路樹としてもよく植えられている。名前は可愛らしいが、冬が近づくこの時期に大量の葉と果実を落とし、道路を好き放題散らかしてくれるやんちゃな植物だ。葉は、ホウノキのように丸…

赤い涙

もう何年も前から、血栓予防のためワーファリンを飲み続けている。ワーファリンは血液凝固を抑制し、血をサラサラにする効果があり、その裏返しとしてちょっとした出血でもなかなか血が止まらなくなるリスクがある。そのため、おいらは身体中に常に内出血痕…

サードインパクト

世の中には第3とつくものが多い。第3世界、第3帝国といった世界の国々を分ける用語から、第3類医薬品、第3のビール、第3世代の〇〇(CPU、携帯電話など)などの商品や技術に関することにもよく使われる。とはいえ、3番目だったら闇雲に使われているわけではな…

はじける夢

この一ヶ月は心身ともに苦しい時期だった。血中の総タンパク、アルブミン、免疫グロブリン(IgG)の値がいずれも入院レベルに下がり、タンパク漏出性胃腸症の再発が強く疑われていた。プレドニンを6mgから8mg、12mgへとどんどん上げていき、ハイゼントラを打つ…

水がへばりつきやがるぜ

ここ最近、なぜか尿の出る量が減ってしまい、どうにも打つ手がない。普段であれば、朝食後の薬一式を飲んだ後は午前中に大量に出た。特に平日、職場で紅茶を飲むとカフェインの効果もあいまってか、30分に一回くらいの頻度で、しかも一回あたりの量も多く、…

水増し障害者

この夏は水増しだらけの年になった。台風や豪雨で日本中が大雨に見舞われ、浸水したり、河川が溢れたりした。さらに先日には、北海道で大きな地震が起き、広範囲で液状化現象が観察された。いずれの災害でも、多くの方々がなくなる悲惨な被害が出ており、今…

フォンタンマスターへの道:筋肉編

フォンタンマスターは筋肉という最強の右腕を従えている。それは決してスポーツ選手のように力強い筋肉ではないが、心臓を強力にサポートし、弱い心臓を健常者並みの働きに高めてくれる頼もしい存在である。 筋肉なきところ、水溜まるなり。大昔の思想家の言…

フォンタン子の生き方

とてもありがたいことに、今後のラインナップを載せて以来、多くの方々からコメントやリクエストをいただいた。今後いただいたリクエストには時間はかかっても一つ一つお話ししていきたいと思う。しかし、今回はリクエストにないことを書いてしまう。なんと…

完璧主義の心臓

人類史において、長らく生物は神が創造した奇跡の産物と考えられていた。生物の存在や構造は人類の理解を完全に超越しており、全知全能の神による創造無くしては生物の存在を説明できなかった。むしろ、生物の存在が神の実存を立証しているとすら見なされた…

不可思議を追い求める心

今回はリクエストを頂いた職業についてお話ししたい。なぜおいらが生物学者という職を選んだかについてである。2018年のあるアンケート調査によれば、小学生男子が将来なりたい職業は、野球やサッカーの選手を抜いて学者・博士が1位だそうだ。理由は定かでは…

今後のラインナップ

過去の記事を読み直してみると、途中で話が終わってしまった話題、いつか話すといって話していないテーマ、いただいたコメントからのリクエストなど今後書きたいことが結構あった。備忘録のために、それらをまとめておきたい。 1. いつか話すといって話して…

真夜中の一杯

ここ数年の度重なる入院によって、習慣づいてしまったものがある。夜中に目を覚まして、一杯の冷たい水やお茶をゆっくり味わって飲むことだ。それはおいらにとって、睡眠以上に安らぎの時間になっている。 入院中は大概厳しい水分制限がついて回った。飲んだ…

Quantifying QOL

Quality of Life(QOL:生活の質)は、病人や障害者には馴染み深い用語である。しかし意外なことに、調べてみるとはっきりとした定義が見つからないのだ。Wikipediaでは、人生の内容や社会的な生活の質を指し、どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り幸…

常備携帯セット

先日の豪雨では、西日本全域に甚大な被害をもたらした。今尚犠牲者の数が増え続けており、一刻も早い救出と復旧をお祈りしたい。このような大災害に見舞われた時、おいらのような持病を持つ人々にとって最も深刻なのは、薬の確保であろう。仮に水や食料や避…

サッカー占い

いつの頃からかW杯の勝敗をタコで占うようになった。その先駆けは、おそらくドイツの水族館で飼育されていたパウル君というマダコで、2010年W杯のドイツ代表の試合結果を高確率で的中させた。今年のW杯では、北海道にラビオ君というミズダコがいて、日本代表…

不戦の誓い

今日は、おいらの住んでいる南の島の慰霊の日だった。おいらがこの島に移り住んでから2度目の日である。昨年のその日は、プールに入ってアイスを食べて、のん気に遊んでいた。今年は少しでもこの島の歴史を学ばなければと、近所の図書館で開催している写真展…

恐怖の支配

凄まじい虐待事件が起きた。虐待という言葉ではもはや軽すぎで、拷問や殺人と言うべき事件であった。事件の詳細が明らかになるにつれ、あまりの惨状に多くの人がそれ以上聞くことが耐えられないほどであった。虐待を受けた少女の心境を想像することは難しい…