ある生物学者の不可思議な心臓

先天性心疾患をもつ生物学者が命についてつづるよ。

移行期チェックリスト

先天性心疾患患者が大人になるとき、小児医療から成人医療への移行が必要になってくる。小児医療だけでは、成人特有の成人病などの病気や、フォンタン術後症候群などの後期合併症に必ずしも対応できないからだ。さらに患者自身の意識の移行も重要である。子…

注射が痛い部位ランキング

ここ何回か少し暗い話が続いてしまったので、たまにはくだらない小ネタ話でもしよう。おいらはこれまで身体の様々な部位に注射を刺されてきたが、その中で痛かった部位をランキング形式で発表したい。 第10位 耳たぶ これは誰でも知っている通り、神経がほと…

植物の涙

おいらの住む南の島には、モモタマナという樹木種が島のあちこちに自生し街路樹としてもよく植えられている。名前は可愛らしいが、冬が近づくこの時期に大量の葉と果実を落とし、道路を好き放題散らかしてくれるやんちゃな植物だ。葉は、ホウノキのように丸…

赤い涙

もう何年も前から、血栓予防のためワーファリンを飲み続けている。ワーファリンは血液凝固を抑制し、血をサラサラにする効果があり、その裏返しとしてちょっとした出血でもなかなか血が止まらなくなるリスクがある。そのため、おいらは身体中に常に内出血痕…

サードインパクト

世の中には第3とつくものが多い。第3世界、第3帝国といった世界の国々を分ける用語から、第3類医薬品、第3のビール、第3世代の〇〇(CPU、携帯電話など)などの商品や技術に関することにもよく使われる。とはいえ、3番目だったら闇雲に使われているわけではな…

はじける夢

この一ヶ月は心身ともに苦しい時期だった。血中の総タンパク、アルブミン、免疫グロブリン(IgG)の値がいずれも入院レベルに下がり、タンパク漏出性胃腸症の再発が強く疑われていた。プレドニンを6mgから8mg、12mgへとどんどん上げていき、ハイゼントラを打つ…

水がへばりつきやがるぜ

ここ最近、なぜか尿の出る量が減ってしまい、どうにも打つ手がない。普段であれば、朝食後の薬一式を飲んだ後は午前中に大量に出た。特に平日、職場で紅茶を飲むとカフェインの効果もあいまってか、30分に一回くらいの頻度で、しかも一回あたりの量も多く、…

水増し障害者

この夏は水増しだらけの年になった。台風や豪雨で日本中が大雨に見舞われ、浸水したり、河川が溢れたりした。さらに先日には、北海道で大きな地震が起き、広範囲で液状化現象が観察された。いずれの災害でも、多くの方々がなくなる悲惨な被害が出ており、今…

フォンタンマスターへの道:筋肉編

フォンタンマスターは筋肉という最強の右腕を従えている。それは決してスポーツ選手のように力強い筋肉ではないが、心臓を強力にサポートし、弱い心臓を健常者並みの働きに高めてくれる頼もしい存在である。 筋肉なきところ、水溜まるなり。大昔の思想家の言…

フォンタン子の生き方

とてもありがたいことに、今後のラインナップを載せて以来、多くの方々からコメントやリクエストをいただいた。今後いただいたリクエストには時間はかかっても一つ一つお話ししていきたいと思う。しかし、今回はリクエストにないことを書いてしまう。なんと…

完璧主義の心臓

人類史において、長らく生物は神が創造した奇跡の産物と考えられていた。生物の存在や構造は人類の理解を完全に超越しており、全知全能の神による創造無くしては生物の存在を説明できなかった。むしろ、生物の存在が神の実存を立証しているとすら見なされた…

不可思議を追い求める心

今回はリクエストを頂いた職業についてお話ししたい。なぜおいらが生物学者という職を選んだかについてである。2018年のあるアンケート調査によれば、小学生男子が将来なりたい職業は、野球やサッカーの選手を抜いて学者・博士が1位だそうだ。理由は定かでは…

今後のラインナップ

過去の記事を読み直してみると、途中で話が終わってしまった話題、いつか話すといって話していないテーマ、いただいたコメントからのリクエストなど今後書きたいことが結構あった。備忘録のために、それらをまとめておきたい。 1. いつか話すといって話して…

真夜中の一杯

ここ数年の度重なる入院によって、習慣づいてしまったものがある。夜中に目を覚まして、一杯の冷たい水やお茶をゆっくり味わって飲むことだ。それはおいらにとって、睡眠以上に安らぎの時間になっている。 入院中は大概厳しい水分制限がついて回った。飲んだ…

Quantifying QOL

Quality of Life(QOL:生活の質)は、病人や障害者には馴染み深い用語である。しかし意外なことに、調べてみるとはっきりとした定義が見つからないのだ。Wikipediaでは、人生の内容や社会的な生活の質を指し、どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り幸…

常備携帯セット

先日の豪雨では、西日本全域に甚大な被害をもたらした。今尚犠牲者の数が増え続けており、一刻も早い救出と復旧をお祈りしたい。このような大災害に見舞われた時、おいらのような持病を持つ人々にとって最も深刻なのは、薬の確保であろう。仮に水や食料や避…

サッカー占い

いつの頃からかW杯の勝敗をタコで占うようになった。その先駆けは、おそらくドイツの水族館で飼育されていたパウル君というマダコで、2010年W杯のドイツ代表の試合結果を高確率で的中させた。今年のW杯では、北海道にラビオ君というミズダコがいて、日本代表…

不戦の誓い

今日は、おいらの住んでいる南の島の慰霊の日だった。おいらがこの島に移り住んでから2度目の日である。昨年のその日は、プールに入ってアイスを食べて、のん気に遊んでいた。今年は少しでもこの島の歴史を学ばなければと、近所の図書館で開催している写真展…

恐怖の支配

凄まじい虐待事件が起きた。虐待という言葉ではもはや軽すぎで、拷問や殺人と言うべき事件であった。事件の詳細が明らかになるにつれ、あまりの惨状に多くの人がそれ以上聞くことが耐えられないほどであった。虐待を受けた少女の心境を想像することは難しい…

Smoke Gets in Your Eyes

最近もまだ夜中に息苦しくなる。水分コントロールがうまくできず、水が抜けたと思ったらまたすぐに溜まり始めてしまうのだ。水による息苦しさとはまた違った感じで息苦しくなるものが、タバコの煙である。昔はそうでもなかったが、最近はちょっとタバコの匂…

フォンタンの暗黒面

おいらはまだフォンタンマスターへの修行が足りないようだ。初めて聞いた方のために、フォンタンマスターとは何か改めて説明すると、フォンタン循環を持ちながら、その体に最適な生活スタイルを会得して、長期間入院などをせずに体調を安定できる達人のこと…

日常生活活動が極度に制限されている人

引き続きおいらの命綱である社会福祉制度の話をしよう。障害者手帳や障害基礎年金には複数の等級があり、それは障害の程度によって決まる。例えば、障害者手帳の場合は、心機能障害には1、3、4級があり、1級が一番障害の程度が重い。それぞれは、自己身…

4本の命綱

おいらが障害者生活を送る上で、命綱とも言える4つの公的社会福祉制度がある。障害者手帳、障害基礎年金、指定難病医療費助成制度、そして住んでいる市町村による重度障害者医療費助成制度の4つである。幸いなことに、おいらは現在この全ての制度を利用でき…

フォンタンマスターへの道:水編

先天性心疾患者にとって、体内の水分量コントロールは極めて重要な課題だ。多過ぎれば、体が浮腫むだけでなく血液量が増えて心臓に大きな負担がかかる。しかし、少なければ脱水や血栓のリスクが高まる。この点は、フォンタン患者には、特に難題である。フォ…

健常者の時間、先天性心疾患者の時間

このブログでも度々書いてきたが、おいらは子供の頃から自分の寿命は50歳までだろうと感じている。5年前にフォンタン術後症候群になり、PLEや不整脈の合併症が出てからは、その寿命をさらに確信した。先日の心筋梗塞の時には、50歳も甘い予想だったなとさえ…

入院ランキング

よく雑誌などに病院ランキングが出ていたりする。それは手術実績や病床数などを基にして、主に医療技術や施設の充実度で評価されている。もちろんそれらは極めて重要なポイントではあるが、入院患者にとってそれと同様に気になるのが入院生活の実態であろう…

贅沢な薬

先日の心筋梗塞の入院後、大幅に薬が増えてしまった。これまでのものと合わせるとその数22種類。今日はそれを一覧表にしたので、お見せしたい。以下が現在おいらが日常的に使っている薬である。薬の名前とその簡単な効果、一錠あたりの量、薬価、1日あたりの…

総痛み量

今回の心筋梗塞の入院では、当然ながら様々な痛い出来事が続いた。入院中は、痛みのレベルを1から10で聞かれることが度々あり、10は涙が出るほどの痛みらしい。最初にあった胸や腕の痛みは大したことはないので痛みレベル2くらいだった。点滴ルートの注射や…

先天性 x 成人心疾患患者になる

左側の腕や胸、背中にあった重く鈍い痛みは、不安の通り、心筋梗塞の兆候だった。発症後、たまたま数日後に先天性疾患の定期診察があったため、診察時にその症状を伝えて追加の血液検査をしてもらった。主治医の先生は小児循環器が専門なので、心筋梗塞など…

心臓は嘘をつかない

以前、おいらの心臓は、身に迫る危機を頭で考えている以上に正確に感じ取ることができる、と書いた。例えば、頭ではまだ大丈夫かなと思っている時でも、心臓の方が先にドキドキと動悸がして危機を感じ始めるのだ。ここ数日、狭心症のような症状が頻発してい…